かもめ/勝田演劇事務所プロデュース(ネタばれ)

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第三幕幕切れ、トリゴーリンとニーナの「長いキス」の後、それまで舞台を覆っていた白幕が切って落とされると同時に急速な暗転!ここでニーナの破滅が予言され、続く第四幕、下手の天井まで届く書棚を含め、間口一杯に組まれた真っ黒なパネルにより、それまで吸音の役目も果たしていた布が取りさらわれた為に冷たく響いてしまう残響が、今の室温と迎える悲劇を見事に伝えている。

リアクションの浅さが一部気になるが、配役もバランスがいい。

アルカージナの村松恭子さん、女優役として手練手管の有るっ丈を駆使して、息子と彼氏を操る見せ場も、可笑しみが見える寸前まで突っ込む様子が、女の怖さ切なさと面白さがそれぞれ半々で、演出を含め「チェーホフ的喜劇」に忠実。

駒塚由衣さんと若松武史兄貴の濃厚なやり取り、劇団四季と天井桟敷が楽々と色事を演じていると思うと愉快で堪らない。

「Lenz」でご一緒した生津(きづ)徹君が、頃合いのトリゴーリン!実近(さねちか)順次君のメドベジェンコが情けなさに隙が無い。同じ日芸出身として頼もしい。

祐子さん演出、いつもながら音楽のセンスが抜群。幕切れの変更は、テンションを共有するという観劇効果を思えば、その場に居る全員が一つの「悲劇」に向き合えて潔い。

先日あやめ十八番で初体験した、あの同じd-倉庫が?というご見物の世代に驚きつつ、8月花組HON-YOMI芝居に向け、とても有意義な時間を過ごせた。


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