三枚花弁の「けぶるゆうぞら」という江戸系品種。骨董商殺人事件の真相を、三種の骨董(壺・刀・絵)に証言させる盲目の弟子。そして、彼は骨董達に復讐されるという結末。
先ず器物の妖怪図絵(百鬼徒然袋)を思い出した。手紙、冠、靴、傘、槍、琴、木魚、面、鈴etc.所謂「付喪神(つくもがみ)」で、年を経た(百年、「九十九神(つくもがみ)」とも)道具に精霊が憑りついて人をたぶらかす。
作者は「羅生門」のイメージもあったという。平櫛田中氏の邸宅は趣きがあるが、如何せんアトリエは実用本位だから、ちと殺風景なのは致し方ないが、ここで22年の歳月を掛け、あの「鏡獅子」が製作されたと思うと、感慨深い。
いつも以上に緊密な演技と演出が圧巻。後半、趣向が立ち過ぎるのが気になるけれど、物語の展開が痛快なので、集中は切れなかった。丸刈りの吉田能君が、アクを抜き去った海老蔵のようで見惚れた。
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