『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』には以前からロマンチックで華やかなイメージを持っていた。
腕白な鬼若丸が出家して弁慶と名乗る一~二段目。牛若丸に剣術を教えていた大天狗は、実は平家方の鬼一法眼だったという三段目、清盛のお下がり常盤御前を妻にした一条大蔵卿は実は作り阿呆だったという四段目、そして、五條橋で牛若丸と弁慶が主従の誓いをする五段目。史実にメルヘンが加味された壮大なお伽話!
三段目の「菊畑」は、満開の菊を背景に、見た目も中身も色とりどりの人物達、緊迫感をあおるノリ地の多用、目も耳も楽しい、歌舞伎味の濃い舞台である。秀山祭の千穐楽を見物していて、初めてこの後の奥庭を見たいと思った。
1971年、国立劇場らしい丁寧な通し上演(吉田社頭、甚三内を復活)を、TV中継で見た法界坊(十七代目中村勘三郎)が最初。
甚三が十四代目守田勘弥で、幼な友達が互角にやり取りしていて、その間の良かった事。
番頭長九郎をずっと持ち役にしていた二代目坂東弥五郎が懐かしい。
70歳の播磨屋が双面も踊ると聞き、見逃すまいと駆け込んだ。中村屋直伝、この正統派「法界坊」、お願いですから、どなたか受け継いで下さい。
当代勘九郎さん
は、よくもわるくも真面目ですからね…やんちゃな可愛さがだせるようになるには年月がかかるやも…
現「中村屋」さんには、串田版がありますしね…。