味方玄/第30回テアトル・ノウ@国立能楽堂

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能役者「みかたしずか」氏の自主公演。30回記念という事で、恐れ多くも冊子に拙文を寄せさせて貰った。

師匠である片山幽雪氏がいらっしゃらないのは残念(今年1月13日御逝去)…が、当代九郎右衛門氏、そして野村萬斎さんや、石田幸雄氏なども加わり、いつも通りの厚みである。

メインは「三輪」。ストーリーはあるのだが、何故?な印象だし、神様(三輪明神)が神楽を舞う御様子を只々見申し上げるしかない。

冒頭から中を隠した作り物(杉の木を現す)が運び出された(正面でなく、笛柱の前、所謂笛前に斜めに置かれた。これ異例なの?)だが、え?後シテはいつ入るのだろう?と訝っていたら、紅(いろ)無しの唐織の金糸が綺麗な前シテ、「里の女」がクルクルと回りながら作り物の後ろへ。席が中正面だったので、この後、後見が3人掛かりで早拵えを手伝う様子がチラチラと見え、興味深かった。

なまじ衣裳の構造やら、鬘をつけるにもコツが要る事などを知る身には、あの狭さで大変だろう、とドキドキした。しかも、格を上げた演出で、囃子方同様、後見も長袴を着用しているから、さぞ煩わしいだろうな…。

しかし、想像するそのドタドタの直後、作り物の緞子がゆっくり下ろされ、お姿をお見せになった三輪明神の神々しさには驚いた。なんだろう、気配がシ~ンとした感じなの。

白大口に銀の箔?がキラキラする白地の狩衣を衣紋付け(丸襟を折り返す)に、被り物をしないのは、神楽を舞う巫女の姿(千早=ちはや)を模したからだそうだ。これは片山家に代々伝わる「白式神神楽(はくしきかみかぐら)」という小書(こがき=特殊演出)。

各流に一子相伝の演出が伝わっているそうだ。昔は「当主一代に一度勤める」という秘事だったという。何と大仰な!流石武士の世界である。

或る地方に伝わる本身による剣の舞で、後ろ側にむしろが付いた「大口」に似た袴?を着ける祭りがある。聞けば、振りを間違えたらその場で切腹する用意なのだとか…。

玄氏の背はそれ程高くなく、その為か面の大きさ、装束の縦横、これらのバランスがとっても良いの。黄金律ってのかしら?大の贔屓だった六代目中村歌右衛門の、振袖振分帯姿の形の良さにうっとりしたのと、同じ感触!いいなア…。

テアトル・ノウ来年の東京公演は、「山姥」@宝生能楽堂、2016年7月9日(土)である。


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