通夜

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「お座敷遊びした事ないの?経験してみる?」

我々が泉鏡花の日本橋を劇化すると聞き付け、その以前から親しくさせて頂いている落語家、鈴々舎馬桜師から突然の提案。

「でもお金ないですよ」「大丈夫、大丈夫。お旦那いるから」

そして、間も無く向島「千代田」で宴席を設けてくれた「お旦那」が、江川康人氏で、初対面だった。当時からお座敷遊びでもカラオケが主流な中、折角だからと、昔ながらの芸者さんの芸とお遊びに終始。生演奏の踊りは勿論、大鼓と小鼓を一人で打つベテラン芸者、「金毘羅船々」、「とらとら」もやったかな?

江川氏の素性を存じ上げなかったので、芸者の踊り&三味線に合わせて太鼓まで披露する彼が、シャンソン歌手と聞いた時は驚いた。

それから5年後、源氏物語第一帖「桐壷」を題材にし、全編に生演奏(ピアノ/芹田直彦氏 、ドラム/長倉徹氏、ベース/山口じゅん氏)によるシャンソンを散りばめた「シャンソマニア(2003年)」では、企画から歌唱指導の上に、劇中のプチコンサートまでたっぷりとお世話になった。

その舞台が好評だったもので、その後、江川氏が企画した、シャンソン歌手達の芝居仕立てのコンサートの演出もさせて頂いた。

移転して2年、新宿3丁目のシャンソニエ「新巴里」で久し振りにお会いした7月13日、「日本舞踊とシャンソンのコラボ公演を企画しているから、是非相談に乗ってよ」と、昔に変わらぬ愛嬌のあるお顔で声を掛けてくれた。

その5日後、彼は突然居なくなった…。前日の夜、彼と打合せをしていた、タップチップス企画(蓉崇くん所属)の赤尾マーサ氏が、「人生何があるか判らないから、その時その時をちゃんと生きないとダメだって、教えてくれたね」

全くだ…。


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