小茂根の閑静な住宅街にある「サイスタジオ コモネA(日芸と同じ最寄駅「小竹向原」から徒歩3分)」。前回訪れた時は、モダンスイマーズの古山憲太郎君が始めて作・演出をした「どん底スナイパー」だった。今宵も、モダンスイマーズの蓬莱竜太君が、2004年に新宿トップスで初演した脚本。それを見た和田氏が、いつか演出したいと温めていて、サイスタジオからの公演依頼に、リーディングという形式で取り上げた。
「リーディング」と呼べるギリギリなライン(役者が着席する椅子は正面を向いているが、動き回り衣裳替えもする役者。台詞は殆ど覚えているんじゃないかしら?)ニートで、家族(兄夫婦)や友人を僻目でしか見られない次男が、アルバイトの面接を受けに部屋を出るまでの一夜の物語。
言えば何の事もない日常なのだが、風邪の熱で現とも夢とも判らない頭で、過去をイジイジ咀嚼する様子を、微妙な変更を加えつつ、シーンを繰り返す脚本に、シアトリカルな面白さがある。兄の理不尽な行動が、家族を守る為だったと知れた時、次男は呪縛から解かれる。自転車から手を振る次男を見送る兄夫婦は、実に優しかった。
鋭い目と笑顔のギャップが効果的な多根君(「ディーラーズ・チョイス」ではお世話になりました)、豪放でしかも強かな伊達っち(「ドリアングレイの肖像」、「アンチクロックワイズ・ワンダーランド」、重厚な舞台ばかりでの共演だが、伊達っち本人は至って快活な男)。その他、配役が実に適材適所で、和田氏の眼力は矢張り鋭い。いいシリーズになる事を祈る。
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