大鹿村騒動記

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あんなにお元気だったのに…。テレビ「2丁目3番地(1971年)」で初めて拝見して以来、無頼な風で居て、にじみ出る愛嬌と渋みが、只のギラギラ男優でない温か味を感じさせる方でした。

彼が大鹿歌舞伎に惚れ込んで企画されたと聞き、公開前から期待していましたが、プレミア試写会での、ひどくやつれた車椅子姿を見て、直感的に癌を思いました。案の定、伏せられていた病名が、死後明らかにされました。遺作を人込みの中で見たくない…。ロングランも、都市部ではソロソロ終わりそうなこの時期(東京近郊や地方は、この後、続々と公開が始まります)に拝見しました。

豊かな自然に囲まれた大鹿村で、のどかで切なくて、そして滑稽な村人達の様子を、三百年の伝統を誇る村芝居を軸に、ソフトなタッチで見せる。原田氏そのものが全てを包み込んだような、良質な喜劇でした。

天を仰ぎ「…アレ?」と呟く最終カットは、同時に原田芳雄という俳優のラストカットだと思うと、楽しかったという感想に多少苦味が交じるのも、仕方がない…。