スピリチュアルな1日/紀伊国屋サザンシアター

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開幕直前、プロデューサー氏と舞台監督氏が、舞台下手に登場し、幕を上げる思いと決意、そして非常時の説明をなさいました。聞き終えて拍手する観客席。舞台芸術が本来持っている、一期一会というライブ感覚を再認識出来て、同業者として有難いです。

震災で一週間稽古が出来ず、2日遅れて初日を迎えました。人の死を扱った作品なので、幕を開けるかどうか、幕内でも様々議論があったと聞きました。しかし、ホロッとしつつもカラッと笑えるコメディで、ともかく個性派揃いの出演者!客席は大笑いし、そしてクライマックスでは大泣きする。こんな時だからこそッ!で集まったご見物は、きっとリフレッシュして劇場を後に出来たのではないでしょうか?そして、中には一緒に見た人々とお芝居談義に花を咲かせ、心地良い足取りで帰った方も居られようと思います。

年度変りの初日、都心は久し振りにアフターファイブを楽しむ人々に溢れていました。これが為に、冷え切っていたサービス業が少しは潤い、饗する側と饗される側も心豊かになったのかな?これが人間の営みなんだ、と改めて思う宵でした。花見中止って、誰が言ったんだっけ?このままでは、東西南北に細長い日本列島が、さらに中身も痩せ細ってしまう…。

温和で繊細な板垣氏の演出の下、主演の石田氏(NON STYLE)の真摯な芝居、「ギルバート・グレイプ」組、吉本菜穂子ちゃんや菅原永二くんらも、こんな状況で、幕が開いた!芝居が出来る!という感動を味わいつつの舞台でした。