金閣寺/神奈川芸術劇場

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三島由紀夫が「個人」を描いた代表作として名高い。僕が最近関わったヨーロッパ的演出が施された舞台達と、随分共通したイメージがある。場面が多く複雑な構造や内容を持つ、言わば、一般的な戯曲らしくないものを舞台化するには、こういった様式が相応しいのだろう。

DVC00298.jpg閉鎖された講堂のような空間が、主人公の苦悩が深まる程に亀裂を生み分解されて行く。果てには新装なった舞台裏の隅々を白々と晒す。「生きよう」と呟き、金閣寺に火を掛けた吃音の青年は舞台を降り、静まり返った見物と同化する。

森田剛君が「溝口」なり切っていて見事。「柏木」の高岡蒼甫君、「鶴川」の大東俊介君、それぞれ、外面の醜と内面の醜を見せつつしかも美しく、亜門氏のチョイスが素晴らしい。

WAKI組公演の疲れも癒えた那河岸屋と観劇。年末年始もずっと殺陣三昧でほったらかしていたんで「明日髪切る」そうだ。