町中のこじんまりした寺で、原爆の叫びを聞く。
峠三吉の代表作「にんげんをかえせ(序)」を外枠に、次々と平易な言葉で原爆を糾弾する詩が、張り詰めた声と身体で表現されて行く。
「お手軽な朗読劇が蔓延している」という批判が、この企画の骨子らしい。そのスローガン通り、咳(しわぶ)き一つ許さない緊張感が、終始会場を埋め尽くす。一字一句、一挙手一投足、ゼロから編み出し、これでもか!と稽古したろうな、とその苦労が常に滲み出る。今までにない様式に驚いた。射留屋(いとめや=美斉津恵友)が、切れの良い高音域を封じ込め、作品の重みを伝えていた。
「にんげんをかえせ」の詩は全文ひらがなで表記されている。この軽みの中に重さと怖さがある訳で、この軽みが「読む」という行為に欲しいように思う。
こういう題材である。原爆を体験していない、その惨さ辛さを伝え知るだけの現代人にとって、タイトルからして身構えが伴う。だからこその「軽み」が必要だと感じた。ソフトさは時に、驚く程恐ろしいものである。
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