身毒丸/演劇実験室万有引力

| コメント(0) | 修正

闇と光の魔術を見た、文芸坐ル・ピリエでの旗揚げ。入れ込みから圧倒された、森下の自前アトリエでの公演。それぞれ寺山演劇の正統な後継者の力強さを見せ付けられた。その後、世田谷美術館での公演は、新しい方向を模索しているように見た。

以降、花組芝居を旗揚げてからは、手前の事で精一杯。随分遠ざかっていたが、カセットテープで聞いた、あの「身毒丸」が、寺山さんと共に創り上げた、J.A.シーザー氏により初演そのままに再演されると聞き拝見。

前後の寺山作品とは、多少趣きを異にする作品だが、伝説となった「演劇実験室◎天井桟敷」の世界を目の当たりに、タイムスリップした印象。何より、オペラ歌手の歌唱を中心に、琵琶と箏、クラシック管弦、などが加わった重層な楽曲が堪らない!今更ながら、シーザー氏の才能に驚嘆する。

肝心の歌詞が殆ど不明瞭なのは、「ロック」という性質上仕方ないと、早々に諦めて音と肉体の躍動を終始楽しんだ。嬉しいのは、天井桟敷同様に、観客に届かす台詞の緩急と、しなやかで俊敏な肉体が、キチッと伝承されている事。当時、重要な魅力の一つだった、俳優個々の濃厚な個性が薄まっているのは、ジャンルを問わず、演劇界共通の現状だが…。

寺山演劇は健在でした!


コメントする