後ろ座席のお喋りや、客席の暗闇で読書を始めるという、驚愕なお隣さんと居合わせるという、悲しい観劇状態であったにも関わらず、幕切れ、僕は静かに泣いていた。
勿論、悲惨な戦争という背景は大きいが、ドラマに大きなうねりがある訳でもなく、ましてや、主人公が69年前にタイムスリップし、死者と会話するという、荒唐無稽な設定。焼夷弾で皆殺しに会う女生徒たちの様子も絵画的だし、故意に時間を後先にする戯曲(うさぎ庵の工藤千夏ちゃん)構成、そして、昭和の実感すら薄い平成育ちの若い俳優たち。
感情移入を拒否するような舞台なのに、終幕近く、この作品のモチーフになった、谷山浩子さんの「真夜中の太陽」のコーラスが始まると、ゆっくり胸が熱くなり、遠慮勝ちに流れる涙に、自分が驚いた。
生死の隔たりで、分かり合えなかった、果たせなかった、登場人物たちの思いが、現実離れした設定だからこそ、知らず知らずに見る者個別の実体験と通じるからなのか。
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