東雲烏恋真似琴/新橋演舞場

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「あけがらすこいのまねごと」モチーフになった浮世草子から発想した外題なのだが、仕上がりを拝見すると、元ネタを匂わしてタイトルを工夫し、集客に繋げる江戸時代と違うから、思い切って新参の新歌舞伎風に「恋人形」て題名はどうかしら?G2氏的には「真似琴」が「マネキン」と読める所に拘ったそうだ。

ディテールは新しいのに、全体としてはちゃんと歌舞伎になってるの。この手の新作は、作家兼演出の方々独自の世界を歌舞伎役者が演じるというやり方、つまりブームに乗った一代、いや同時代の作り捨て風だったりするのだが、再演、しかも顔触れを変えて練り直せば、立派に歌舞伎のレパートリィになるように思う。要は、G2氏がすっかり歌舞伎に寄り添ってるからかな?と言ってベタベタの歌舞伎でもなく、サスペンスやら、不思議な幕切れやら、ちゃんと「新作」になっている。下座もお決まりのようでお決まりでないバランスがいい。正直、花組でやりたいな、と思った次第。

市村萬次郎丈のお弓、ねっとりしているのに、サラッといい感じ。あんなギャグをシャーシャーとやっちゃうのは菊五郎劇団だからかな。小夜人形が突然悪い子ちゃんになるのも愉快。ここらは福助丈の持ち味ですな。

二本目の舞踊「夏 魂まつり」送り火が赤く染まる幕切れに情緒があるな、と思っていたら、今朝の新聞見出しに「送り火中止」とあり仰天したが、「被災松(陸前高田の高田松原の松)使用」が取り止めになったのだそうだ。放射能検査済みで許可の下りた松なのに…。

終演後、同伴した伊予屋と、演出助手を勤めた山田美紀ちゃんと、お稽古秘話などを肴に大いに飲んだ。