ふるあめりかに袖はぬらさじ/劇団新派

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痛恨だが、当時、歌舞伎とアングラに明け暮れ、見れた筈の杉村春子氏のお園を見ていない。初演以来4演目まで、文学座公演に関わらず、俳優座の小沢栄太郎が岩亀楼主人を演じていたそうだ。この役のニュアンスが判る。伝説の事件(外人との交渉を拒み自害した岩亀楼の遊女喜遊)をモチーフに、有吉佐和子氏が調べに調べた上で、杉村氏に当てて存分に描いたフィクション劇!

今、三越劇場を根城に、キッカケを作った角藤定憲(すどうさだのり)率いる壮士芝居の旗揚げから120年を超える伝統の継承者として頑張っている劇団新派が、新劇に書き下ろされた作品を、新たな新派の十八番にしようと懸命に取り組んでいる様子は、「古典」が生み出される過程を、今、目にする興奮を感じました。しかも二代目八重子丈が、歴代お園が腰を抜かしたまま幕を切った型を変え、すっくり立ち上がり、後ろ姿の八文字を見せるラストシーン!常に冒険精神が無ければ、古典継承はあり得ないという強烈な姿勢を見せて貰いました。