一世一代

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興行の為か、「一世一代」を何度も掲げた、七世松本幸四郎の弁慶。「一世一代」と銘打たなかったが、実質「一世一代」と内外も認めて見守った、六世中村歌右衛門昭和五十三年の花子。二十歳に初演して以来四十四年、当代松嶋屋「与兵衛」が仕納めになろうとしている。染五郎&孝太郎コンビで上場した時、「こういう芝居は、仕出しに至るまで上方の匂いがでんとあかんねん。今もう無理やから、もうせいへんねん」と漏らしていた当代仁左衛門丈。教えた海老蔵の代役で偶然陽の目を見た当代「与兵衛」が、歌舞伎座さよなら公演という嬉し悲しの興行で見る事が出来た幸せを、「アウロラ」稽古中に関らず、「見たい!」と言っていた那河岸屋と共に味わいました。殺しの件で、お吉が滑った時、何かぶつかる音がしたな、と思っていたら、終演後ご挨拶に来た息子孝太郎君に「あんた、足ぶつけなんだか?」「いえ、大丈夫です」。親子、相手役、そんなこんなな先輩後輩の会話が妙に嬉しかった、久し振りの芝居見物でした。