同郷の男

| 修正

私は久しぶりに、久しぶりの時間に、久しぶりのボタンを押していた・・・
何ヶ月ぶりであろうか。私が「ラーメタル」の暖簾をくぐったのは・・・
私は昨日まで、親友である大泉洋氏と共に
ヨーロッパ21ヶ国完全制覇の旅」へ行っていた。
番町皿屋敷」の稽古中、スケジュールを調整しての過酷な旅ではあったが、充実した内容を収録出来たと満足している。
ただしかし、この旅の難点は「食事」であった。
何処へ行ってもパンとチーズとハム。
もう、ウンザリであった。
私は決めていた。
日本に帰ったら、まずは「ラーメタル」だと・・・
羽田空港に降り立った大泉洋氏は
「どう、このまま北海道まで行って、ほっけで一杯・・・」
しかし私は、せっかくの親友の誘いを断り、我が故郷へと車を走らせた・・・
暖簾をくぐり、ふと見ると、何やら揉め事が起こっているようだ・・・

客「このスープは何?」
店主「炒飯にお付けしているスープなんですよ」
客「ほなら、このスープに、ラーメン入れてもらえる?」
店主「すいません、一応それは出来無い事になってまして」
客「えっ、なんで?ええやん、なんであかんの?」
店主「すいません、その様なサービスは当店では・・・」
客「嫌、サービスや無くて、金払うし、食べたい言うてんねんから入れてや」
店主「すいません、このスープには、この麺は合いませんし・・・」
客「どうでもええねん!入れろ言うたら入れろや!!!」
店主「すいません、出来ません」
客「・・・もうええわ・・・」
限りなく「ひさうちみちお似」の客は静かにフェードアウトをした・・・
私「勘弁してくれ、関西人・・・」
バイトさん「はい、お待たせしました、ラーメンと半ライス!!」
例え他人事であれ、揉め事の後のラーメンは、舌にざらつき、喉の通りの悪いもんである・・・

※制作部注:文章中の交友関係・収録情報は言うまでもありませんがフィクションです