姪「駄目だよ！」
私「嫌、いいんだ」
母「貴方、いい加減にしなさい！」
私「分かってるさ。しかし・・・」
秘書「お願い致します、お母様の気持ちも・・・」
私「君は黙ってなさい」
ばあや「お願い致します。坊っちゃんがそんな事では・・・せめて私の作った、鯵の南蛮漬けを召し上がって・・・」
私「駄目ぇ〜！んもうっ！無ぅ〜理ぃ〜！！」
無理なんだよ、とにかく。
食事が・・・
中学の頃、共に熱く語り合った
「松本零士研究会」以来、未だ友情が続いている
「銀座・ロオジエ」のチーフ・パティシエに特注したマヨネーズを舐めながら、
スパークリングリキュールとワインのみでなんとか夕食を済ませた私。
そりゃ私だって、食器選び、テストテイスティングから携わった
「オテル・ドゥ・ミクニ」で、久しぶりに「まかないハヤシライス」でもかっこんでみたいもんだ・・・
「身体」にも「つぶやき」にも無理が多い夏。
早めに「鈴虫」に鳴いて欲しい・・・
「カウチポテト」と言う言葉がございますが・・・
写真は、37歳、社会人の夕食である。
両親共働きの友達の家で、高2の夏休み「恋の悩み相談の夜」を過ごすためのアイテム・・・では無い。
そしてヘンゼルとグレ−テルに助けて欲しい訳でも無い。
ただ、食欲が無い・・・
グラスに発泡酒を注ぎ、冷や奴に醤油をかけ、さて・・・
顔ニンマリ、一日で最高の時間が始まる・・・
と、「夏」「醤油」でフワリと過去の記憶が蘇る・・・
9年前の夏。
「花組芝居」に入るなんて脳味噌の一筋にも無かった当時。
私は「新宿梁山泊座員」兼「映画スタッフ」兼「食事担当」の人間として韓国に居た・・・
灼熱の韓国での映画撮影。
過酷であった。
いわゆる「オール海外ロケ」である。
毎日毎日、日本から「スター」と言われる俳優が出演者として渡韓し、撮影が終わると帰ってゆく・・・
ある日、特別出演として「唐十郎」氏が来韓。
「新宿梁山泊」は唐十郎氏が主催する「唐組」とは兄弟劇団であり、映画監督である「新宿梁山泊」の座長は、元「状況劇場」の俳優である。
緊張が走った。
緊張フルマラソンを全力で走った。
下っ端の私など緊張のチョモランマである・・・
とある食事休憩。
韓国の田舎、限られた食材を使い、日本人の口に合う食事をと、全神経を集中。
漸く作り終え、様子を見にテーブルへと向かった。
すると・・・
唐氏「ねえ君、醤油ある？」
私「っ・・・少々お待ち下さい！！」
・・・無いんです。
韓国に日本の醤油・・・
プロデューサーに相談に行く。
プロデューサー「探してこいや」
・・・せやからないねんて・・・
車を走らせ食材店を周り、手ぶらで帰って来た。
当然そんな出来事など遥か彼方。
誰も居ない食堂で大きなため息と共に力が抜けた・・・
しばらくして夏の撮影を終え、全員一旦帰国した。
その際、再度冬の撮影に向けて、我ら食事担当の人間は、トラックで日本の食材を買いに走った・・・
たかが「醤油」
されど「醤油」
しょっぱい苦労自慢・・・
さて、冷や奴〜
御斉唱下さる方、いらっしゃると助かります・・・
♪君はっ、何を今、見つーめているーのっ・・・
押し入れの奥の奥から、自分の物とは思えない本が出て来おった。
恐らく、新劇養成所に入るか入らないかの時。
何も知らない、何も分からない、ボディービルをやれば「三島由紀夫」になれる、花園神社で腕立て伏せをしていれば「唐十郎」にスカウトされると、脳味噌が上腕二等筋だった頃に購入した物と思われる。
あの頃の自分。
愛しくてたまらない・・・
師匠出演「アリバイのない天使」拝見・・・
んっもう、女子女史序詞助詞じょし祭りのグローブ座。
そんな中、受付の女子に止められなかったのが不思議な位胡散臭い野郎が二人・・・
出演者の弟子、磯村智彦と、ひょんな事から出演者の友達「幌張馬車」座長、松岡哲永氏である。
月曜日でありながら、大入り満員のグローブ座。
恐るべし・・・
芝居が始まるやいなや、一瞬にして暖まった客席。
俳優の演技全てに反応する客席。
対して、芝居が始まるやいなや、固まってしまった野郎二人・・・
役者と言う生き物は、凄い芝居を観ると固まってしまうのね・・・
師匠の「台詞じゃない台詞」にグローブ座が揺れた、沸いた。
普段「感動のない全身」を抱えて生きている弟子。
熱く、熱く、こみあげて来た・・・
