ヒハマタノボル

| 修正

朝目覚め、その日一日が幸せに、又は何事も無く平穏に過ぎ、終わるなんて誰にも保証されていない。
しかし、多くの人々が、毎日の平穏を当たり前に過ごしている。
勿論私も、その一人である。
嫌、今となっては「あった」と過去の話となってしまった・・・
私は特に欲深い人間では無い。
ごく普通の人間である。
しかし何をもって「普通」と言うのかと問われれば、答えに貧する程の「普通」の人間である。
これからの文章は私が過去に多々書いた物と余り変わらない物である。
私はつまらない人間である・・・

私には数少ない楽しみがある。
それは「馴染みの豚骨ラーメン屋に通う」 ただ、それだけの事である。
私の家の近所には、長年通い慣れた「豚骨ラーメン屋」がある。
かれこれもう4年程通っているだろうか。
休日の昼食はここ、と決めている店なのだ。
我が心のミシュラン5つ星と言っても過言では無い・・・
その店で私が4年間必ず毎回注文する物「ラーメンと半ライス」・・・
勿論この店には他にもメニューはある。
醤油ラーメン、豚骨醤油ラーメン、つけ麺、餃子、ピリ辛餃子等々・・・
しかし私は一切他の物を注文しない。
他の物は他で食せる。
私がここに通う理由はただ一つ「豚骨ラーメンと半ライス」を食べたいからである。

その日も私は数少ない幸せを求めて店ののれんをくぐった・・・
ランチタイムには少しばかり早い午前11時。
私は何時もの様に食券売機にコインを入れ、迷う事無く、左上隅のラーメンと、左から二番目、上から五番目の半ライスのボタンを押した。
ピーク時には満席の店内、今は何処に座ろうと自由である。
しかし私は何時もの様に、紅生姜、辛子高菜、胡椒、胡麻、ニンニクおろし等が綺麗に揃っている自称「私の席」に座る。
さてさて、これから私の数少ない幸せの時間が始まるのである。

・・・と、ここで、何時も笑顔で私に食事を運んで来て下さる妙齢のお姉様が、複雑な表情を称えて私の傍に。
「ごめん、ライス、炊けてないのよ・・・」
「えっ!?あっ、はぁ・・・」
「炊けてないのよ・・・ないのよ・・・ないのよ・・・」
私は真面目な人間である。
楽しみの少ない人間である。
その私に「豚骨ラーメンライス無し」の予想もせぬ苦難の道が・・・

想像して下さい。
和食の店に入って「秋刀魚の塩焼定食」を注文して、ご飯が無い。
洋食レストランに入って「デミグラスハンバーグ定食」を頼んでライスが無い。
上野動物園に行って「パンダ」が居ない・・・


言葉が出ない。
妙齢のお姉様は
「ごめんねー、かえ玉じゃ駄目?」と一言。
それは私にとって「豚肉の生姜焼きに牛タン塩焼じゃ駄目?」と同じ一言である。
「ミートソースにナポリタン付けるけど」
と何ら変わらない。
「ミッキー、休みなの。あの子今日はサンリオの中身だって」・・・・・・
すいません長々とこんな話を・・・

さて、そろそろ締めなければ、と思いながら、巧い文章が見つから無い。
これもまた、平穏な文章の小さなハプニングである・・・