第二回

第二回 後編その1

自分以外の若手全員をバカにしつつ、
僕こそがインテリであると証明する怪談牡丹燈籠TOPICS
【噺家みたいにゃイカないゼ】 後編

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サ、前回は、怪談牡丹燈籠が『仇討ち』と『怪談』の螺旋構造である、という話をしたんですが、
今回僕がスポットライトを当てるのは、その『怪談』の部分です。
深い暗闇の中、懐中電灯を頼りに進む"冒険者の心持ち"で話を展開していきますので、お時間余裕のあるお客様は、是非ご同道頂ければと思います。

日本の怪談が恐いと言われるのは、
ハリウッドホラーのようないわゆる、単純な驚かす系の恐さではなく、
人間の芯みたいなところから、ふと湧き上がる、ドライアイス的恐怖を描いているからだと思います。

僕も臆病なわりには恐い話が大好きで、夜毎友達を集めては、どこからか仕入れてきた怪談を披露し、
「ヤバイヤバイ」と大騒ぎしています。
tani.jpgそういえば昔、夜中に谷やん(※右写真)に恐い話をしてあげたら、
「キャー恐い恐い」って途中までメッチャ反応よかったのに、大オチの時だけ、爆睡してました。
ダンスのしすぎなのか、先輩への敬意までムーンウォークしてるのを実感した、貴重な体験です。


日本の古典的な幽霊というのは、足だけなかったりするわけですけど、
あれも一見すると普通の人と変わらない、というのが最大のポイントですよね?

昔、ハルミ(=ミハエル=美斉津)が見慣れない、お洒落なジャケットを着ていて、
「あ、あれいいな。新品かな?」と思って良く見たら、僕のジャケットだった時は本当に度肝を抜かれましたが、
彼のような○○○○がそばに居なくても、
「あれ!これよく見たら・・・!」っていう、アハ体験的恐怖は意外と日常に転がっているものだし、
僕はそれこそがジャパニーズホラーの醍醐味であると考えます。


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第二回 後編その2

いきなり個人的な話なんですけどネ。
大学2年の時だったか、柿喰う客のN屋敷と後輩のY君、照明のT君という4人、
僕のアパートに集まって、百物語をやろうってことになったんです。
1人ずつ、とっておきの怖い話を披露して、ワーだのキャーだの大盛り上がりだったんですが、
とっぷり真夜中に突入した頃、Nが地元・青森のキツネ憑きの話をしてくれました。


話はこんな内容でした。

彼の地元の○○市では、未だに人間とキツネが土地をめぐって激しい争いを繰り広げているそうです。
人間はキツネを狩るし、キツネはその報復として人間に憑く。
キツネ憑きは現在では精神病を表す言葉として使われているようですが、彼の地元では、まんま文字通り。
朝、行って来ます!と元気良く出かけた子が、30分後には放心状態、
ヨダレをダラダラとたらしながら帰ってくる、なんてことが本当に起こるんだそうです。

地元の人ならば一目でわかります。
「あ、キツネに憑かれた!」

そんなことがザラですから、古い人はその対処法も心得ています。
キツネ憑きの解き方、それを聞いて、僕達はゾッとしました。

憑かれた人を自分の家の蔵に連れて行き、柱に縄でくくり付け、何日も放っておくというのです。
そんな事をすれば、もちろん人間は弱っていきます。
つまりキツネの目的は、人間に憑いて、弱らせ、殺すことですから、憑いた人間がみるみる衰弱していくと、
「もう良いだろう。道連れは御免!」とばかり、死の間際、フッと出て行くそうです。
そこを見極め、ようやく縄をほどき、初めて介抱をします。
マヂかよーって、聞いてた僕ら3人はたぶん、生まれて初めてキツネを怖いと思いました。

「でもね・・・」

  ≫≫ Nの話はまだ続きます。

第二回 後編その3

「この話の本当に怖いところは、
 自分の身内を半殺しにしてでもまだ、キツネと徹底抗戦しようとする、
 地元の人たちの精神なんだよね。」


ト、次の瞬間、


プルルルルルル。


部屋の固定電話が、1コールだけ鳴りました。
初めは呆気にとられていた4人でしたが、よく考えたら午前2時なんです。
しかもその電話、インターネット用に接続したオマケのようなものだったので、
番号を知ってるのは親しかいません。

起 き て い る わ け な い ん で す よ、11時に寝る田舎の人が。

緊急?一瞬そんな風に考えましたが、でもそれだとワンギリの説明がつかないし、
出なければケータイにかけ直すだろうと・・・

え?親ぢゃない。ぢゃあ誰?

そこまで考えて、多分4人同時だったと思います。






ウワァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!



こたつに潜り込んでガタガタ震えました。
もちろん百物語は強制終了。まんじりともせず、朝を迎えました。

これが僕が体験した最恐のアハ体験的恐怖です。
この事件からしばらくして、僕は出血大サービス、カナシバリ確変状態に突入していきます。

あの『説明がつかない』という事へのゾクゾク、初めて異変に気づいた時の戦慄、
怪談牡丹燈籠に潜んでいるのは、そんな純和風で一線級の恐怖たちです。
その檻の中に、"登場人物"という上着一枚を羽織ってこの身をさらす、俳優としての幸福。
嗚呼、もしかしたら、僕の感じたゾクゾクの半分は、
恐怖というよりむしろ、武者震いに近いのかもしれません。


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第二回 後編その4

・・・。
今までのところ全部読み返してみたけど、どうだい、タッくん。(=二瓶)
君にこんなお洒落なTOPICSが書けるかい?
ムリだろうねぇ、だって君メガネかけてないものねぇ。
考えてご覧よ、センパイの女形さん達も、みんな普段はメガネかけてたりするんだよ。
君とボクの間にある、女形としての決定的な差っていうのは、やはりその辺にあるんだろうねぇ・・・。

ケケケ。

甘い甘いと言われていても、君はしょせん小岩井ミルクコーヒー。
スタバのキャラメルマキアートとは、値段も格も違うのさ。



さぁ、可愛い後輩まで思い切りコキおろして、気分も良くなったところで、
そろそろ入力字数オーバーぎりぎり。ちょうど時間となりました。

今年の夏も暑いそうです。
クーラーは一時神が与え給うた奇跡の空間を作りだしてくれますが、
9月に入れば、それももう食傷気味。
皆様も、人工的な冷気に嫌気がさしたら、
背筋に伝わる本当の悪寒を求めて、
『ゾクゾク』と劇場まで足をお運び下さいます様、お願い申し上げます。



今年最高の納『涼』をお観せ致しましょう。




うまい事言っちゃった。
ホラ、またうまい事言っちゃったよ、もぉ~。
なんでこの口はすぐうまい事言っちゃうんだろうか。
恐いです、自分で。恐い恐い。
残念、結局一番恐かったのは、僕の文才でした。なんつって。イエーイ。

・・・。はい。
最後の最後にどうしても面白いことが思い浮かばないあたりが、素人の限界でしょうね。

ま、しょうがない。
散々好き放題、書かせてもらったし、
ここらあたりで振り出しへ。

「上手い上手い」と思っちゃいても、
とどのつまりは素人高座。
百戦錬磨のあの娘よろしく、

『噺家みたいにゃイカないゼ』


お後がよろしいようで。










・・・。


あれ?







・・・あ、そうだ!イソ

予期しないエラーが発生しました






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長文の為か、最後は強制終了してしまったようです。

ちなみに、先生の長編の魅力に取り憑かれてしまった
という貴方は、是非「花組通信」にご入会を
毎回、先生の筆が存分に振るわれていますよ!

写真は、「夜なら吸えない煙草も…」とハードボイルドに決めた先生。
horikosi4.jpg

第二回 前編

自分以外の若手全員をバカにしつつ、
僕こそがインテリであると証明する怪談牡丹燈籠TOPICS
【噺家みたいにゃイカないゼ】

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4月某日、ヒマつぶし目的で花組事務所を訪ねると、
「ちょうど良かった!!」そう言って制作のU嬢がとびついて来ました。

「ヒマな人を探していたのヨ!!」

押し付けられたのがこの怪談牡丹燈籠のTOPICSです。
あまりの失礼千万に、初めは断ってやろうかと思っていたんですが、曰く、

「こういうのは文章力のある人ぢゃないと」
「若手で一番のインテリにお願いしようと思ってたのヨ」
「涼君なら皆が納得してくれるような、知的なTOPICSになると思うわ」
「何といってもメガネが似合っているもの」
「大ちゃん?ダメよ、あんなブルーカラー」
「甘ったるいBOSS缶がお似合いよ」
「涼君はホラ、アールグレイぢゃない」
「存在はキャラメルマキアートだけどheart.gif」 
「ブラウンシュガもたっぷりheart.gifキャー!!」

などと制作女性陣の、日頃思っていてもなかなか口に出せない本音がビシバシと飛び出たところで、

「任せておきなさい。」

快諾することとなりました。




というわけで、その日のうちに文庫版の怪談牡丹燈籠を借り、読むことになったのですが、
皆様はこの怪談牡丹燈籠というお話はご存知でしょうか?
幽霊が皿数えたり、白無垢で分身するヤツぢゃないですヨ?
おそらくほとんどの方は僕と同じように「タイトルは知ってるけど~」程度の知識しかないのではないでしょうか?

あらすじは割愛しますが、実際読んでみた第一印象はまさに傑作戯曲。
海外で言えばハムレットやオセローのような、いわゆる超一流古典と比べても何の遜色もありません。
ただの怖い話だと思って読むと驚愕しますヨ、コレは。
シェイクスピアなど有名すぎる作品というのは、ともすると敬遠されがちで、
「なんとなく読む機会がなかったから、未だにストーリーわかんなぁい」
みたいな人も多いのですが、それも一般常識という観点から言うと注意が必要です。あまり度が過ぎて
「"To be, or not to be"ってマクベスですよネ?」
なんて発言が飛び出すようだと、花組の『羞恥心』こと、丸川敬之君と同レベルになってしまいますから、
賢明な読者の皆様なら「ハタチをすぎて、それは避けたい・・・」とお考え頂けるでしょう。
特に古語を使用してあると、なかなか食指が動かないものですが、
どんなにとっつきにくいものでも、一度本腰を入れて読んでみれば、
その作品が有名である『ワケ』みたいなものが、必ず見えてくるはずなんです。

食わず嫌いは誰にでもあるものですが、こんなTOPICSを読んで下さる貴方のような方は、
少なからず次回公演『怪談牡丹燈籠』に関心のあるお方でしょうから、
是非、文庫版の『怪談牡丹燈籠』もご一読いただければ、と思います。

何故、自分は見たこともない、この『怪談牡丹燈籠』という作品を知った気で居るのか?

それはこの作品が、まぎれもない名作であるという証拠なのです。
単純に言って、読めばわかる。そして読んでしまえば、
これが、どのように舞台に立体化してくるのか、劇場まで確かめに来たくなるはずです。
book.jpg


なんつって、
なんだか催眠みたいになってきましたが、でも本心です、コレ全部。
インテリをかわれてTOPICSを書いているのに「すごい、ヤバイ」をアピールしているだけだと、
むしろアホな子になってしまうので、少し内容にも入っていきたいと思います。

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怪談牡丹燈籠は、簡潔に言えば主人公、孝助をとりまく仇討ちの物語です。
復讐劇という点では、ハムレットと似ているところもありますが、
孝助の人間像は、ハムレット型【※思索的、懐疑的で行動的でないタイプ】というより、むしろアクティブ。
ケンカしてみたり、いぢめられてみたり、結婚してみたり、仇討ってみたりと、とにかく大忙しの汗と涙の感動秘話です。

・・・と、こんな風に書くと、何処が怪談なの?と、不思議に思う方もいらっしゃるでしょうが、
実は怪談部分は孝助とは少し離れたところで展開していきます。
ハムレットで言うとレアティーズを軸とした物語といったところでしょうか。

三遊亭円朝はこの怪談部分を魅力的に描くことで物語をより重厚なものにしています。
しかも高座での語り通りなのか、2つの話が交互に書かれているため、読み始めると止まりません。
怪談の主人公である、萩原新三郎に感情移入していると、いきなり孝助の話に戻され、
孝助に引き込まれていくと、今度は新三郎に・・・

2つのストーリーはまるで、一本のエレベーターとそれを取り巻く螺旋階段のよう。

読者を深い劇世界に引きずりこむという点では同じところに向かっているはずなのに、
決して真っ向から交わろうとはしない・・・。そこがまた、このお話の妙なのでしょう。

ところが中盤、片方の物語は急な終焉を迎えます。
2つの物語の行く末を見極めようと一心不乱に追いかけてきた読者を、ハッと足止めさせ、
あぁこんな深い所まで来てしまったのかと気づかせる、心憎い演出。

え?どちらが先に終わってしまうか知りたいですか?
それは読んでのお楽しみ。

と言いたいところですが、冷静に考えればすぐにわかることです。

仇討ちという目標に向かって修羅の道をまっすぐ下って行く孝助と、
恋に翻弄され、取り返しのつかない深みにまでクルクルと迷い込んでしまう新三郎。
ただでさえ遠回りになる螺旋階段を、エレベーターに負けじと下っていけば、いつかは目がまわり、足がもつれて・・・



ホラ、ころん。



転がり落ちていく先は、もちろん螺旋『怪談』の闇の中でしょう。

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「噺家みたいにゃイカないゼ」と言いつつ、きれいに締まりました堀越先生のTOPICS。
ここまででも充分大作ですが、まだまだ筆は止まりません。
第2回目にしてすでに予定外の延長戦!
先生、次回は更にDEEPな世界に連れて行ってくれそうです。心してお待ちください!
次回「噺家みたいにゃイカないゼ」後編、乞うご期待!!

写真は、上野にてスワンボートに乗る先生。
horikosi2.jpg