第二回 後編その2

いきなり個人的な話なんですけどネ。
大学2年の時だったか、柿喰う客のN屋敷と後輩のY君、照明のT君という4人、
僕のアパートに集まって、百物語をやろうってことになったんです。
1人ずつ、とっておきの怖い話を披露して、ワーだのキャーだの大盛り上がりだったんですが、
とっぷり真夜中に突入した頃、Nが地元・青森のキツネ憑きの話をしてくれました。


話はこんな内容でした。

彼の地元の○○市では、未だに人間とキツネが土地をめぐって激しい争いを繰り広げているそうです。
人間はキツネを狩るし、キツネはその報復として人間に憑く。
キツネ憑きは現在では精神病を表す言葉として使われているようですが、彼の地元では、まんま文字通り。
朝、行って来ます!と元気良く出かけた子が、30分後には放心状態、
ヨダレをダラダラとたらしながら帰ってくる、なんてことが本当に起こるんだそうです。

地元の人ならば一目でわかります。
「あ、キツネに憑かれた!」

そんなことがザラですから、古い人はその対処法も心得ています。
キツネ憑きの解き方、それを聞いて、僕達はゾッとしました。

憑かれた人を自分の家の蔵に連れて行き、柱に縄でくくり付け、何日も放っておくというのです。
そんな事をすれば、もちろん人間は弱っていきます。
つまりキツネの目的は、人間に憑いて、弱らせ、殺すことですから、憑いた人間がみるみる衰弱していくと、
「もう良いだろう。道連れは御免!」とばかり、死の間際、フッと出て行くそうです。
そこを見極め、ようやく縄をほどき、初めて介抱をします。
マヂかよーって、聞いてた僕ら3人はたぶん、生まれて初めてキツネを怖いと思いました。

「でもね・・・」

  ≫≫ Nの話はまだ続きます。