口福

| 修正

気が付けば、私は何時もの様に、何時もの時間に、何時ものボタンを押していた・・・

午前10時40分。
「ラーメン」そして「半ライス」・・・
皆様はもう飽きただろうか。
しかし私は、飽きると言う事を知らない・・・
店の外には雪が舞っている。
店に着く迄、私は少々辛い思いを禁じ得なかった・・・
何時ものジャージ、何時もの皮ジャンで、何時もの愛車「宇宙船地球号」を漕ぎ、何時もより少し必死に店に向かった私。
寒さで手が痺れている。
肩から胸に掛けて、力が入り、固まっているのがわかる。
しかしながら、この身心の緊張を解きほぐしてくれる瞬間が、間も無くやって来るのである・・・

姉さん「は〜い、お待たせしました〜」
何時もの品の良い化粧、眼鏡、バンダナ。
店主の妻である妙齢の姉さんである。
今日も私の元へ最高の喜び「ラーメン」「半ライス」を届けてくれた・・・
辛い思いをした分、喜びも大きい・・・
店内に客は私だけ。
後は妙齢の姉さん、恐らくアルバイトであろう「ラーメン」担当の兄さんのみ。
「チャーハン」担当の、こちらも恐らくアルバイトであろう何時もの兄さんは未だ出勤していない・・・
ランチタイム前、特にする事の無い、私に幸せを運び終えた姉さんは、
「でね・・・」
と、「ラーメン」担当の兄さんとお喋りの続きを再開し始めた。
「姫路城が綺麗だった」と、姉さんは兄さんに、とても嬉しそうに話している。
私が来店する前からの話しの続きであろう。
当然私は、何故姉さんが「姫路城」の話しをしているのかは分からない。
休日を利用して「姫路城見物」へ行ったのか、近くで「ラーメン講習会」があって、「せっかくだから」と「姫路城見物」をしたのか・・・
嫌、私が今回話したいのはそんな事では無い・・・
私が話したいのは・・・ダメだ、どうやら酒が回ってきたようだ・・・