開幕直前座談会 其の2

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構成・文=山村由美香


竜組・虎組、両方見れば作品がより豊かに

k2.jpg――今回、本公演以外でやった作品を、しかもダブルキャストで再演しようと思った理由は?

加納 前回はオフシアターで、さらにかなり小さい劇場でやったこともあって、来てくださったお客さんが常連さんメインだったんですね。僕としてはもっと幅広い方にも観ていただきたい作品だったので、機会をうかがっていたんです。で、今回スズナリでできることになって、五年前とは座内の顔ぶれが新しくなって増えてもいますので、今ならダブルにしても、あるバランスの取れたキャスティングができると思って決めました。

――加納さんもおっしゃっていたように、水下さんのディック役はすごくはまっていたので、今回バグ役と知って意外でした。

水下 確かにバグは(初演キャストで今回も虎組で演じる)原川(浩明)のイメージが強いけれど、バグが抱える狂気というか破壊性は俺にもあるから、そこを出せるようにやれば、原川とはまた違うバグになって面白いのではと思ってます。
加納 そうなんです。本人の前で言うのも何だけど、水下はとても知的な部分も多いけれど、反面、バーンって行っちゃうところが俳優の表現としてあるし、原川のほうは見た目はああですけれど(笑)、実はとっても真面目なんですね。だから両方とも違う部分でバグの面は持っていて、その二人がダブルでやることで、どういうものが見えてくるか楽しみで。
水下 俺もそこはどう出していけるか楽しみ。ディックというのはすごくしゃべる役で、初演のときはそれが一番大変だったんですよ。でも、今回あらためて台本読んで気づいたのが、バグはあまりしゃべってないのに、初演ではすごく存在感があった。それを自分もできるかなっていうのがチャレンジですね。
吉原 この話は四人それぞれがうまく書けていますけれど、話の芯というか狂言回しになっているのはディックですね。これはいろんな解釈があるから、演出なさる人の前で言っちゃいけないことかもしれないけれど。

――私は初演を観て、ディックとバグの関係性にとても面白さを感じました。

y2.jpg吉原 どうしようもない男の友情っていうんですかねぇ。
加納 そうですねぇ。
吉原 裏切ってもまたくっつくんですよ、あの二人はきっと。そう思うと腐れ縁っていうのかなあ。男と女の間には、ああいうものは存在しませんよ。そういう男の純愛みたいなものが、僕はジーンと来ました。
水下 もしかして、できてんじゃないの?くらいな雰囲気がありますよね。
吉原 男のペーソスというか、そういうものが出ていますね。

――今回のダブルキャストでこだわったポイントは?

加納 それぞれの組を、なるべく世代を混ぜた形にしたいというのがまずありました。上が51歳で下が25歳ですから(笑)。あとキャスティングしていて面白かったのは、一人の俳優の中にも見た目のイメージ、演技のイメージ、本人の持っている性格や個性、それぞれに多面性があって、最初は見つからなかったものが何年か付き合っているうちに見えてくるんです。だから今回は決めるまでに、「こいつは実はこの役でもいいんだけど、このバランスの中ではこの役」というのが結構ありました。やりませんけれど、実はシャッフル可能なキャスティングなんですよね。
m2.jpg水下 二組ということでは、普通だったら、それぞれ違う演出をしたりするじゃないですか。でも、これは初演のときに俳優の動きとそれに対する照明がある程度決まっているんで、たぶん動きは同じだと思うんです。だけど受ける印象は全然違うはずなので、できれば二組見てもらって、どちらがいい悪いじゃなく、動きが同じなのにこんなに違うっていうのを体験してほしいなと。そうすれば、作品がより多面的で豊かなものに見えると思います。
吉原 稽古はどうやってなさるんですか? 二組いっぺんにやるんですか?
加納 竜組から読み合わせをして、一時間過ぎて区切りのいいところで、次は虎組で同じところをやるという感じですね。時間については僕自身の経験で、ヨーロッパの演出家と仕事すると大体、一時間やるとブレイクというパターンなので、それが染み付いちゃってるんです。
吉原 お互い見てるんですか?
加納 そうなんです。違う組の稽古のときも一緒にいるっていうのは決めていて、それは台詞の言い方とかで僕の言ったことなんかを、情報として共有しておいてほしいということもあります。水下も言ったけれど、チーム別の上演だと、大体あえて分かりやすく変えちゃうことが多いですよね。お客さんもそれに慣れちゃってて、そういう表層的な部分でしか芝居を観なくなっちゃっている。でも歌舞伎にしても能にしても、同じことをやっていても演者が変わると違うというのが面白さじゃないですか。日本人であれば現代劇に関しても、そういう感性を持っていてほしいなっていう思いが僕の中にあって。だから今回も、「あいつはああやってるから俺はこう変えよう」みたいなことは一切考えないでくれって皆に言ってるんです。同じことやってても、肉体が違うんですから絶対、自然に違うんですよ。お客さんにはそこを観てほしい。



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