チラシ&あらすじ 

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※本公演は、【前篇】と【後篇】に分かれて上演されます。タイムテーブルにご注意ください。

●あらすじ
前篇
独逸語学者の早瀬主税は恩師である酒井俊蔵に内緒で、柳橋の芸者であったお蔦と所帯を持っている。ある日、酒井の愛娘、妙子に縁談話がもちあがる。相手は主税の友人で静岡の名家として知られる河野家の御曹司、河野英吉。英吉は同級生である、妙子の通う照陽女学校教頭、宮畑閑耕の紹介で妙子を見初めたのだ。
妙子が主税の恩師の娘であることを知った英吉は、自分の結婚相手に相応しい人物かどうか、彼女の肺病の有無、親族関係、交友、俊蔵の借金にいたるまで、主税に対して妙子の身元調べを始めた。けれども、小さいころから妙子と兄妹同然に育てられた主税は河野家の無礼な態度に我慢がならない。道学者の坂田礼之進からの酒井俊蔵への紹介依頼も突っぱね、この縁談を破談にしようと試みるものの、逆に恩師にお蔦との関係を知られるところとなる。
酒井は主税のことが心配であるがゆえに、「俺を棄てるか、婦(おんな)を棄てるか」と主税に決断を迫る。隼(はやぶさ)の力(りき)とよばれる掏りであった自分を、学者にまで育て上げてくれた恩師を棄てることなどできるはずもなく、主税はお蔦と別れることを宣言する。
偶然巻き込まれた坂田礼之進の掏り騒動で、主税は掏りの万太を逃がしたことが新聞沙汰となり、勤め先の参謀本部の訳官を辞職、免官となった。坂田はこの事件によって縁談の邪魔になる主税を酒井家から引き離そうとするのだが、酒井は妙子の縁談話は妙子にぞっこん惚れている主税の意見次第だと断言する。掏り事件をきっかけに、主税は、お蔦を気心の知れた出入りの魚屋めの惣夫婦にまかせ、自分は静岡に引き込む。河野一家に対する復讐を胸に誓って。

後篇
静岡行きの列車の中で主税は奇しくも河野家の二女、菅子に出会い、お互い望んで懇意になる。菅子は英吉と妙子の縁談を認めさせるために、主税は復讐劇を完成させるために…。
お蔦は主税に会えぬ悲しみから、魚屋めの惣の家で床に伏すようになる。ある日、お蔦の見舞いに来ていた姉芸者の小芳は、やはりお蔦に会いにやってきた妙子に会う。小芳は実は妙子の生母。芸者であるがゆえに、実の娘に母と名乗ることの出来ない小芳、好きな相手と一緒に居ることの出来ないお蔦。二人はそのやりきれない思いを嘆きあう。
主税は静岡で独逸語の塾を開いていた。そこへ、普段は現れることのない、河野家の長女道子が顔を出した。主税は道子に対し「道子の本当の父親は河野家当主、河野英臣ではなく、母親である富子が、河野家の馬丁(べっとう)をしていた貞造と密通した際に出来た子供である」と明かす。そして、死の床にある実父の貞造に一度でも会ってくれと頼む。驚きつつも、主税の話を信じた道子はその夜、主税に連れられ貞造の小屋を訪ねた。
一方、お蔦の病は日に日に重くなる。危篤の状態を聞き、駆けつけた酒井俊蔵に主税との仲を許されたお蔦は、その腕の中で「せ、先生が逢っても可いって、嬉しいねぇ!」とこときれた。高熱によって静岡の河野病院に入院していた主税の意識が戻ったところへ、お蔦の遺髪を持った妙子がおとずれる。
「その影には毒があり、光には魔あり、熱には病あり」と言い伝えのある、日蝕が起きるという日。河野一族を久能山に呼び出した主税は、今まで秘密にされていた道子の出生の事実や、河野一族の不貞の数々を暴きだす。そして、河野一族の家長、英臣に家の繁栄の道具として娘たち利用するやり方、妙子の産みの母親は芸者の小芳だと知って、態度を急変させたことを激しく非難した。
主税に河野家の破綻を宣告された英臣は、銃で主税を殺そうとする。しかしながら、主税に心奪われた道子と菅子に阻まれたため、富子夫人を撃った後、自分の頭に銃を突きつけ自殺する。道子、菅子の姉妹は抱き合いながら、崖から身を投げ出す。河野家への復讐を果たした主税は、お蔦の後を追うべく、潔く命を絶つのであった。