バグ対談 水下きよし×原川浩明

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バグ対談 水下きよし × 原川浩明
連日の濃ゆい稽古の後。言ってみれば残業も終えた帰り際。
同級生対談、ゆる~く始まります。
CIMG2752.JPG

(プシッ)
二人 お疲れ様~(乾杯)

○・・・お疲れのところ、すみません。よろしくお願いします。
二人 よろしくお願いしま~す

○・・・お二人とも初演を経験していますが、初演の時の様子って覚えてますか?
(水下ディック役・原川バグ役)
水下 俺はもう、台詞が大変だったなあ・・・ディック(笑)もー台詞。それだけ。おもしろかったけどね。
原川 俺はねえ、みんなジャンキーじゃない?だから狂ってる所をよりジャンキーらしくしようとして変に小細工したり、変な癖を入れてみたり、いかに変な男に見せるかに重点を置いてたね。
水下 小細工だったと(笑)
原川 そう、今はね。そう思う。俺はね。
水下 でも、やっぱり初演て作るのに時間がかかった印象があるなあ。
原川 こういう作品をやること自体初めてだったし
水下 だからこそおもしろかったよね。

○今回の再演は、その初演を踏襲する形でやっているそうですね?
水下 基本的には同じなんだけども、初演と今回とだと、例えばAからBまで行く線は同じだけど、行き方が違うみたいな所はあるよね。それは俳優個々でも違うし。
原川 組ごとにも違うな
水下 例えば同じ「おはようございます」を言うとしても、テンションとか在り方は同じでも、現れてくる音とか表情が違う。

○では、そんなお互いを観ていてどんな事を感じますか?
原川 やっぱり、自分の役を見るじゃない?水下を見て、「あ、こうくるか」と。水下の場合は、多分作らなくても、素材だけでも十分怖さが出るんだよね。
水下 お前に!?お前に言われたくないよ!!(笑)
原川 いやいやいや(笑)結局、「俺は怖いんだぞ」って演技をするとちっとも怖くなくて、水下がただ単に立ってる姿だけでも「あ、怖いな」っていう部分が見えててさ。だからあんまり余計な事をしなくてもいいのかなって思って。この役は十分怖く書かれてるから。
今回はあんまり作りこみすぎずに、そぎ落としていくようにしてるな。

mizushita.jpg水下 俺はそれぞれの怖さが出るといいなと思うよね。自分自身の抱えてる凶暴性を引き出していく。そういう所が4人とも出るといいかな。例えばドニーだったらさ、チキンでバグにはいつもビクビクしてて。でもバグにしてみたら、ちょっかいかけてるだけっていうくらいの感じでもあると思うんだよね。仲間同士の関係性とかは、とっても普遍的に描かれてて。観る人が、4人の登場人物の中で「俺はこいつだな」って共感できると思う。ジャンキーっていうオブラートには包まれているんだけど、実はそういう普遍的な事が描かれているのが良いよね。

原川 ・・・こんだけさあ、ペラペラペラペラ・・・これくらい初演でやってくれりゃあな(笑)ディックは最高だったのに
水下 (笑)いや、今のは俺の言葉だから
原川 もう今聞いてて、あぁこれはディックだって思ったもん。ペラペラペラペラ・・・もう、ちょっとだまっててくれって(笑)
水下 (笑)


原川 でも今回おもしろいのは、今まで俺、若い奴とがっぷり組んだ事なかったから、それがまたおもしろいんだよ!
水下 おもしろいよね。こんだけ幅があっても一つの作品としてまとまれるっていうのも。割とどこも同じくらいの年齢の役者で構成して上演していると思うし。訳者の吉原さんもおっしゃっていたけど、そこを許容する部分も脚本の力なのかな。
原川 俺たちが70(歳)過ぎて(再演)やってな?
水下 「お前のせいで50年も塀の中だよ」とか言ってたりして
原川 70歳になっても、奴らまだ同じことやってる(笑)そういう連続性を感じさせる所もあるね。
水下 きっと結局ドニーが一番ピンピンしてるんだよ。
原川 あいつはしぶといな。
水下 病んでるくせに、薬を止められないでいて、でも健康にすごく気を使ってるっていう(笑)ドニーは色んな感情が出てくる役で、おもしろいよね。チキンだから、バグに対してはいつもビクビクして。でもディックは優しくしてくれて、話も聞いてくれるから好きなんだろうし。
原川 対してビリーなんかにはさ、「あいつは新入りだから」って、ちょっと偉そうにしてみたりなんかもして。そこら辺がいいよね。
水下 またビリーもいい役だよね~。

harakawa.jpg原川 役者としては、ビリーは難しいけどやりたいよね。まあ、俺がやるなら七:三にするけどね?かつらで(笑)

水下 いや、書くんだよ(笑)
原川 ダメだよー、かつらなきゃ(笑)

○(笑)ディックについてはどうでしょう?
水下 そりゃもう魅力的でしょう。水先案内人で、1人ずつ口説いていくし。それぞれに対して全部表情が違ったりして、人を引き込む上手さがあって。
原川 手練手管でくるしな。こっちにはこう、こっちはどうって。漁師で言ったら、どの魚をどう釣るか、餌も釣り方もよく知ってて、それぞれに一本釣りしてる訳だ。
そういうディックの頭の良さと、役者の腕がね(笑)難しいけど見せ所だよね。

水下 ビリーを引き込む所なんか一番おもしろいかも。他の2人はまあ、ディックの事はもともと好きな訳で。それがない分、ビリーには本当に出口をなくして、理詰めで追い込むからね。
原川 がっちり塞いでいってな。俺たち(バグ)なんかもう、なあ?ワアーって(笑)
水下 俺たち自分で出口見つけられなかっただけだもんな(笑)
原川 気がついたら地引網でザーって引っ張られてた。いつものように(笑)
水下 なんだかんだ言って心を解き放てるのはディックだけだからね。軽口叩きながらジャレててさ。
原川 昔の青春映画みたいだもんな。
水下 そういう人間くさい魅力がね、これを読んでくれた人にも伝わると嬉しいですね。
原川 綺麗にまとめてくれたけどさ、最後に言わせてもらうとね、やっぱりお前ペラペラペラペラ喋りすぎなんだよ!酒が入ると余計にそうなんだよな。それになぁ・・・・


その後も、軽口とジャレ合いに熱い演劇談義を交えて、まだまだ話は尽きないお2人でした。