[永澤]サケ・ストーリーは突然に

去年の年末のことです。あるお料理屋さんで友人たちと、美味しいごはんと日本酒をいただいておりました。

「次の日本酒はこちらになります」と、出てきたお酒は楯野川〈無我〉。


大の楯野川好きの僕。楯野川で満足できなかったことはありません。「勝った!」と確信しました。今日は素晴らしい気持ちで一日を終えられるのだとホッとしました。やったやった! しかし、その安堵は次の瞬間、衝撃とともに消え去りました。
そのお店では日本酒の銘柄毎に、その日本酒に合うお猪口を大将が出してくれます。楯野川に合わせ、新しい酒器がやってきます。テーブルにお猪口が置かれます。「なんだこれは……」僕は思わず呟いてしまいました。


「か、わ、いい……」写真だと伝わりにくいのですが、見た目よりどっしりとした重さのあるガラス製で、ねじりが加えられていることによって中に入っているお酒の表情が豊かになるのです。また、このねじりによって持ち心地が非常に独特なものとなります。そして友人たちのお猪口を見ると、ねじりの具合が僕のとは異なっており、この酒器は完全にハンドメイド、そして一つ一つがオンリーワンであることがわかるのです。
このお猪口で飲んだ楯野川は美味しかった、そして僕はこの酒器に心奪われました。欲しい! この器の情報が欲しい! (お酒の味の話じゃなくて酒器の話をしても大丈夫かしら、このお猪口にこんなに盛り上がっているのなんて私だけだから少し決まりが悪いわ)内心はそんな状態で、オドオドしながら大将に「あ、あのぅ、この器、とっても素敵ですね。この器って、どちらのものなのでしょうか……」と尋ねてみました。「こちらは古賀雄大さんの作品ですね。ご本人もお酒が好きらしいんですよ」とのお返事。……絶望しました。(こ、個人製作の酒器ぃ……)いや、もちろんそのへんのお店にぴょっと売られているものだとは思っていませんでしたよ? 思っていませんでしたが、個人製作になっちゃっちゃあ手に入れることは難しいじゃあないですか。「へぇ〜。とっても素敵な器ですもんね〜。いやぁ、かわいい器だな〜教えてくださってありがとうございますえへえへ」なんて返事しかできない悲しさ。しかし憂いても仕方ありません。世の中にはいろんな酒器があるんだなと、この素晴らしい出会いに感謝し、その後のごはんとお酒を楽しみました。「こがゆうだい」という名前だけは忘れないように……。

長くなっちゃったので、続きますっ!→次回【旅立ちのヒロシ〜幻の酒器を求めて〜】

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