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ハナオフ『相対的浮世絵』役者インタビュー 番外編
演出家・水下きよしに聞く!
 『相対的浮世絵』もいよいよ本番間近!
 ロングインタビューシリーズの大取りはこの人。演出の水下さんに聞いてみました。




お疲れ様〜っ!! プシュッ

※稽古終わりの為、いきなり缶チューハイを開けるテンションの高い水下氏。


Q.お疲れ様です。ハナオフ演出は今回で2度目ですが、また土田さんの戯曲ですね。

きっかけはね、以前桂と邦ちゃんと洋が芝居観に行った後に
(居酒屋で)「3人で芝居やりたいね〜」って言ってたのね。
それを聞いてて、面白いなぁと。
で、3人が核になる芝居がないかと思って探したの。
ただ、3人の登場人物が同じ分量で喋ってる脚本がなかなか無いんだよ。
だから土田さんの(脚本)にしたの。
この芝居も元々は男5人の芝居だったんだけどね。
よく書けてるなと思った。


Q.最初に桂・北沢・高荷の組み合わせで観たいっていうのがあったんですね?

そうそう。それで。


Q.『相対的浮世絵』の意味は?

『相対的』って言うのは、生きてる人と死んでる人。
もしくは此岸と彼岸。
彼らが現実=浮世で繰り広げる物語だから『浮世絵』。
土田さんがそういう風に書いてた。


Q.今回台詞を標準語に書き換えてますが、その理由は?

2004年だったかな? 最初にこの芝居をトラムで観たのね。
“これは架空の地方の話だ”って土田さんが言ってたんだけど、
俺はどこかの方言だと思って観てたのね。
彼らの劇団が京都出身だから、
創作方言でも、やっぱり関西方面の匂いがするわけよ。
上演したときに大体の人はそれを西の方言だと思うと思うの。
そうすると、俺らがやった時にイントネーションとかが、『嘘だ』って思って
(お客さんの)意識が言葉の方にいっちゃうんじゃないかなって。
だから(トラムで)観たときに、標準語で観たいなと思ったのかな。
方言って、それによって台詞がオブラートに包まれた感じになるのね。
だから標準語に換えるとその分表現はきつくなるんだけど、
それによって対立とか人間の弱さとかが浮き彫りになるんじゃないかな。
俳優達も標準語の方が得意だからね。
きっと(原作とは)違うものにはなるだろうけど、
言葉にとらわれずにやりとりとか内面とかに向き合いたくて、だから、換えてみました。


Q.キャラクターも原作では男5人ですね。

今回弟役を妹に書き換えたんだけど、
理由としては『お兄ちゃん』って言わしたかったのね。
(注:原作では“兄貴”)
『お兄ちゃん、もう私に会えなくなっちゃうんだよ』
って妹に言われて佇む高荷が見たかった(笑)
野村役も女性にしてみたんだけど、
彼女はもっともっとうるさいキャラになってもいいよね。
『ちょっと、空気読めよ!』っていう(笑)


Q.ここで桂さんからの質問です。


by.桂
演出やってて、芝居したくならないの?

ならない(笑) 演出してたい。
加納みたいに器用じゃないし、両方はできないよ。
それにねぇ、結果が観られて楽しいんだよ、演出って。
役者はさぁ、自分の演技とか生で観られないじゃない。
そりゃあ“こいつらと芝居したいな”とは思うよ。
でも“演出してる”って事に集中するのが楽しい。


Q.演出家VS役者。意識の切り替えは?

全体を見ようっていう心構え? それだけ。皆上手いから(笑)
つまんないなぁ、と思ったら何がつまらないんだろうって考えるんですよ。
で、言った通りに(役者に)動いてもらって、
すっきりしない所があったら、またやってもらう。その繰り返し。
加納がすごいなと思うのは、そこ。
演出してるときと、俳優してるときってテンションが違うのね。
演出家はちょっと引いて見てるんだけど、
俳優はその空間にいいテンションで“ポーン”って入らなきゃいけないから。
『動いて』って言う事はできるけど、
いざ自分が俳優として動くとなったら、全然違うからね。
加納はその切り替えが上手いよね。
そのときの彼の集中力の持っていき方は、傍で見ててもすごい。


Q.少人数の演出の方が好き?

面白いじゃん、お芝居として。
まぁ人数多いのも楽しいけどね。
ただ本公演では大人数でやってるし、せっかくハナオフだから少なくてもいいかな。
3人から5,6人っていうのが面白いですねぇ。
2人になるとまた難しいけど。
ほら、みんなが出ずっぱりで演技ができるじゃない。
俳優なんて、(舞台に)出てたいんだから(笑)


Q.学生服は今回の見所の一つ。水下さんはどんな高校生だった?

俺? 部活ばっかりやってた(注:ラグビー部)。
あ、でもうち私服だったからなぁ。学生服は着てない。
ただ私服の一つとして学ランがあって、
衣替えの季節になると誰が一番最初に学ランを着てくるかって言うのは楽しみだった。
あと女の子は冬になると皆ブーツを履いて来てて、下駄箱に入らないの。
だから下駄箱の上にブーツがズラーって並んでた。
そのころはブーツ泥棒が流行ってさ。
ま、基本はジーパンにT-シャツ。
ただ毎日着替えるから、制服よりは清潔だよ(笑)


Q.高校のときはお芝居はやってなかったんですね。

高校のときはねぇ、やってなかった。
芝居を始めたのは大学の4年生から。
好きになったのはちょうどつかさん(注:つかこうへい)とかが流行ってた高校2年ぐらい。
俺最初は演出がやりたかったのね。
で、最近になってたまたまドラマティックカンパニーさんと知り合って、
“演出しない?”って声かけられて演出もやるようになったの。
今一緒にやってる5人は上手いですよ〜。


Q.そんな出演者からの質問です。


by.山藤
ちゃんと皆に言いたい事言えてますか?

あぁ、言ってる。言えてますよ〜(笑)

※加納さん登場。チラッと覗いてすぐ帰る。

あ、今加納が覗きにきました〜。
例えば俺が、『○○な感じでやって』って言っても
わからないかもしれないじゃない?
俺の○○と俳優の○○は微妙に違ってたりとかして。
それをあわせるのが難しいけど、言わないと違いが詰まんないしね。
だから遠慮はぜんぜんしてない。
まず基本的な設計図はここ(脚本)にあるからね。
で、稽古しながらこのシーンが浮き彫りになってないな、とか思って組み立てていく。
結局お芝居って、外から見てる人が居ないとダメなんだよ。
設計図どおりにやればいいんだよ、それが難しいんだけど。
確かに大きい芝居じゃないから、
演技してない感じがして不安だって洋ちゃんとかは言うけども、
でもそこでテンション保ってないとバレバレだからね。
感情は常にダイナミックじゃないですか。
感情のダイナミズムを見せるわけで、劇場は大小にすぎないんだよ。


Q.今回見ていただきたいポイントは何ですか?

考えたんですよ、この芝居の何が気になってるのかなって。
一つは、『再生』というテーマなんじゃないかな。
この芝居って、死んでる側も生きてる側もわだかまりを持ってて、
お互いに『どう思ってたの?』って聞きたいんじゃないかな。
別に聞いたからって何が変るわけじゃないんだけれどもね。
ただ一遍、吐き出せばいいんだって事。
わだかまっている事を見つめ直す、対峙するって事。
それによって、また最初から始められるんだよ。
きっと見て欲しいポイントのひとつはそこなんじゃないのかな。
あとね、物語の構造として、
キャラクター同士の力関係が微妙に変わっていくじゃないですか。
そこが面白い。
洋ちゃん(=関守)とかころころ変わって面白いよね。
さっきまで2対2で対立してたのがさ、3対1になったりして、オロオロするでしょ。
かわいいじゃないですか。


Q.3人は成仏したと思いますか?

したんじゃない?きっと。


Q.では最後に一言お願いします。

絶対観に来て欲しいなぁ。
土田さんの脚本もいいし、これをきっかけにMONOを観に行っても欲しいし。
人間は愛しいです。
人間の生きてる哀しさや優しさを感じてもらえれば。


Q.何か言い残した事はないですか?

あのね、(土田脚本)2回やったじゃない?
もう1回やって“土田シリーズ”にしたい(笑)
いい脚本があればいつでも芝居やりたい。
こうやって花組で取り上げれば、色んなの観れて楽しいじゃない?
ほら、桂も演出したいらしいし(笑)
で、今度は…


 そしてこの後も夢の企画話が続く…。

 さて、今回の役者インタビューシリーズいかがでしたでしょうか?
 稽古場の楽しい雰囲気が、少しでも伝われば幸いです。
 皆様、ぜひぜひ新宿のシアターブラッツまで足をお運び下さいませ!!


迷っている方へ。是非、いらして下さい。



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