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――ところで、商社マンとしてカナダに赴任された吉原さんが、何故お芝居の翻訳をするようになったのですか?吉原 ちょっとお恥ずかしい話なんですが、私はカナダの前にオーストラリアにいまして、両国の英語の違いにびっくりしたんですよ。カナダの英語が全然聞き取れなくて、耳を慣らすためにはどうしたらいいか考えて、劇場に通うことが一番いいと思ったわけです。1970年代の話ですから手軽なラーニング・テープやビデオなんかないし、当時のカナダは国の文化的保護が潤沢で、映画並みの値段で芝居が観られたんですね。で、トレーニングのためにカナダの現代劇に通ううちに、はまっちゃったんです。
加納 ほー。
吉原 またカナダの芝居ってものすごく面白いのに、日本から誰も観に来ていない。それが残念で、じゃあ自分で紹介する仕事をしようと思って始めたんです。サラリーマンとの二足の草鞋で20年近くやって、今は退社して芝居専門でやらせてもらってます。変な話、カナダでは随分商売させてもらってお世話になったんで、恩返しの一つとして、誰も手をつけていないカナダ演劇を紹介しようという思いもありました。かっこいい言い方をすればですが。
加納 でも、その功績は大きいですよ。
1937年、東京・葛飾生まれ。早稲田大学文学部卒業。’70年に住友商事(株)駐在員としてカナダに渡航。’72年に住友商事の海外子会社「コマツ・カナダ」を設立し、同社のディレクター、プレジデント、チェアマンを歴任しながら30年間カナダに在住。その仕事の傍らカナダ戯曲の邦訳(40本)、日本戯曲の英訳(4本)、日本・カナダ間の演劇交流促進等に携わる。2000年に住友商事を退職、カナダ演劇の対日紹介を目的とする「メープルリーフ・シアター」の創設に参画。2000年、カナダ演劇の研究と対日紹介の功によりカナダ・オンタリオ州マクマスター大学より名誉文学博士号を受ける。2002年、「サラ」「ハイ・ライフ」その他カナダ戯曲多数の邦訳により湯浅芳子賞受賞。カナダ劇作家協会終身名誉会員。訳書に「カナダ戯曲選集」(全三巻、東京・彩流社刊)。カナダ永住権を持ち、現在バンクーバーに居住しているが国籍は日本。
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