姫狸田の君 (佐藤誓=2000年退座)

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「田の君」は狸の別称だったと思います(16年は一昔(ひとむかし)…)。ジャンヌ・ダルクを赤姫姿にしたのは、モチーフの一つ「お坊吉三」(河竹黙阿弥が書いた戯曲『三人吉三廓初買(さんにんきちさくるわのはつがい)』に登場する「三人吉三」の一人)が武士なので、つまり女バージョンです。ジャンヌに「イギリス人をフランスから追い出せ」と告げた聖ミカエルは、大天使なんですが、人間と同じように「聖人」として敬われていて、フランスの守護聖人です。因みに日本の守護聖人はフランシスコ・ザビエルなんですってね。演じた佐藤誓くんは、CM「この男ロゼッタ人」で有名です。花組での彼は決して女形では無かったですが、男勝りな少女なら出来ると考えました。最近の舞台や映像からは想像もつかないでしょうが、彼はちゃんと踊れます。ジャズダンスやタップダンス!今や完全に隠し芸ですが、花組ではダンス振付も担当してました。



娘狸玉木(大井靖彦)
若狐ジャックの拳(北沢洋、モノクロ写真は加納幸和)

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姫狸・娘狸・尼狸の三人は、「三人吉三(お坊吉三・お嬢吉三・和尚吉三)」の趣向です。玉木は町娘という設定にしたので、ビラビラ付きの前差し、くす玉の簪を付けてます。ボブの頭にどうやって差すんだ~!突っ込まないで下さい。ジャックの拳との恋愛は、仇同士ですから、さながらロミジュリですな。狐なんでベージュの着付です。歌舞伎の「葛の葉」も正体を現す直前の衣裳(石持(こくもち))が狐色に変わります。確か、この衣裳の「薄(すすき)と菊」は僕が描いた記憶があります。もう残ってないだろうな…。利賀村の公演では、北沢洋が都合で来られなかったので僕が代役しました。雲雀ケ丘みすずの顔から変える時間がないので、自前の眼鏡で誤魔化しちゃった。



逆熊(さかぐま)の大狸親分 (桂憲一)

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和服なのに、ソフト棒に葉巻をくわえたレトロ感が味噌。愛媛県出身の桂憲一が演ずるんで、関西ヤクザの設定にしました。眉毛ないのは、本人のプランだったかしら?桂は、この他にお狸クインテットでボーカルを勤めました。このバンドは正式には「馬鹿くんバンド(BKB)」と言い、何回かライブコンサートを行ってます。一回だけ飛び入り出演をした事があります。ずっと楽屋に隠れていて、ステージへ出た時の皆さんの喚声が楽しかった。音楽に疎いんで、曲目はバンドさんに選んでもらいました。THE YELLOW MONKEY「LOVE LOVE SHOW」と、確かアリス「ジョニーの子守唄」を歌ったかな?最初「イエモン」と言われて「伊右衛門」が浮かんじゃうのは、立場上仕方ないでしょう。花組公認なんで、メンバーは座員に限るという事で、最近若干顔触れを変え、密かに練習をしていたようです。この情報を得、再演の今回、再登場願った訳です。


次回は初演バージョン最終回です。
こうご期待! 

(撮影/宮内勝)

お待たせしました!
座長自らが語る、初演版登場人物紹介の第二弾をお届けします。
「懐かしい~!」というあなたも、
「初めて見る!」というあなたも、
これを読んで一層ご期待くださいね。


樹奇(じゅき)天帝 (大井靖彦)

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ジャンヌ・ダルクの生まれ故郷ドムレミイ村の教会の近くに、大きなブナの木があり、仙女(妖精)達が出没するというので「仙女の樹」と呼ばれていました。ジャンヌがお告げを聞いたのが、この辺りと伝えられています。お告げの主は、聖ミカエルと聖マルグリットだったそうですが、それらから発想して、姫狸を戦争へ駆り立てた神の名を「樹奇(じゅき)天帝」としました。実は、当時(2005年)地下鉄サリン事件が起こっていて、某教団に押し掛けるマスコミなどに、信者達がビデオカメラを向けていた様子をそのままに、ビデオカメラを回しながら登場させていたのですが、或る終演後、客席に、その教団の冊子が落ちていて幕内は大騒ぎ。たまたま近くの駅前で信者達が配っていた物と判明したのですが、気持ち悪いんで翌日からその演出は取り止めました。今思えば、物騒な頃でした。



お狸クインテット

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初演本第一稿ではカルテットでしたが、メンバーが増えたというのでクインテットにしました。座内バンドが出来ていたんで、是非とも利賀村初出演の趣向に、演劇の聖地で素人ライブをしちゃえ!という目論みでした。舞台稽古で大事件が起こったのですが、詳細は会員制の「花組通信」に掲載しています。是非、会員登録なさりご購読下さいませ(会員登録はこちら)。奥の植本潤がピアニカ、手前左の大井靖彦がベースギター、その右が、広田豹(1997年退座)のリードギター。他に八代がリードギター、ボーカルが桂憲一でした。今回は新しいメンバーで「お狸ブラザーズ(人数に変更があってもいいようにしました。また、モデルにしたバンドが○○ブラザーズだった事もあり…)」として登場します。バンド稽古はもう始っているようです。



尼狸穴壷尼(あなつぼに)(広田豹=1997年退座)

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広田豹(ひろたひょう)は、花組史上唯一の芸名です。最初は本名を名乗ってましたが、入座して三年目、「姓と名のイニシャルが同じ名前にしたい」という事で、劇団では初めての劇中口上という形で披露しました。昔のアングラ演劇の役者達は、良くシャレた芸名を名乗ってました。「唐十郎」氏の名は、同じ状況劇場にいらした「天竺五郎」氏とお対だったんです。曽我兄弟に三国を繋げている訳です。傑作だな。広田君は英語に堪能(一橋大学卒業)で、在座中は更にフランス語の勉強もしていました。退座後にロシア語もマスターしたらしいです。「穴壷尼(あなつぼに)」実は命名の由来をトンと忘れてしまいました。和尚吉三→坊主→マッサージ→穴(ツボ)だったかな…。



白面金毛九尾狐(はくめんきんもうきゅうびぎつね)
(三人遣い人形)

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狐軍の総大将なら、この怪物でしょう。インドや中国を舞台にした傾国の美女(実は化け物)伝説が、日本へ伝わり、日本でも美女に化した狐の物語が生まれ、それぞれが合体し、三つの国に跨って国を揺さ振る大悪事を働いた、九本の尾を持つ狐の大妖怪に膨らんで行ったのだそうです。能に「殺生石」という作品があります。玉藻前という美女に化け、鳥羽上皇を悩ませた九尾狐は殺されますが、その怨念が石となり、近寄る生き物を毒気で殺しています。通り掛かった玄翁(げんのう)という僧が祈り、パックリ割れて現れた野干(やかん)(狐に似て声は狼という悪獣、もしくは狐の別名)こそ九尾狐の執心で、「あなたの祈りのお陰で成仏出来る」と言って姿を消す。この後(のち)シテ(後半の主役)は通常、「野干」というおどろな面を掛け、装束も鬼同様なのですが、小書(こがき)(特殊演出)に、化けていた玉藻前のイメージから女姿で演じる事があります。それを参考にして緋袴に白い長絹を着てます。顔は「大飛出(おおとびで)」という、元来、菅原道真が雷神となった怒りを現した面を真似ました。あ、かなづちの「玄能(げんのう)」は、殺生石を祈り割った玄翁上人が語源です。


(次回へつづく!)

撮影=宮内勝

めっきり涼しくなりました。残暑お見舞申し上げます。
『聖ひばり御殿』の稽古初日までもう間もなく!
16年前に初演されたこの作品、ご存知ないお客様も多いはず!?
というワケで、今回の先取り日誌は、豪華座長のコメント付初演登場人物のエピソードをご紹介いたします。


雲雀ケ丘(ひばりがおか)みすず(加納幸和)
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脚本上では存在しない役でした。鈴木忠志氏という演劇界の重鎮に、利賀村で作品を作れ!と言われ、張り切り過ぎちゃって、役者としての自分の出番を考えてなかった事に気付き、群読(複数で同じ台詞を言う。卒業式の呼び掛けみたいなもの?)の一部を横取りして喋りました。木下順二氏の「子午線(しごせん)の祀(まつ)り」の舞台で見た、山本安英(やすえ)丈のモノローグをパロデイにした役なんで、ほんとはね、裾引かなくていいんだけど、折角、能舞台を模した「新利賀山房」の、真新しいスベスベな床で芝居が出来るのだもの、大きな顔して引かせて貰いました。実は16年振りの再演に際し、思い切ってカットしました。じゃ僕はさて何をやるでしょう?



おきみ大明神(水下きよし)
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喪服に天使の輪と羽根を付けているのは死者だから。水下の女形は、他に「ザ・隅田川(旗揚げ)」奥女中、「奥女中たち」梅の方(再演ではお辰だが、簡略衣裳だった)、くらいかな?珍しい。ちゃんと黒無地帯をお太鼓に締めています。「一間(いっけん)男」水下サイズの女用喪服を、花組は所有しております(少し自慢)。ヘアの色が只の白でないのは、確か、この公演の3年前「薔薇西遊譚(つたえきくベルサイユのものがたり)」で、僕がマリーアントワネット役で掛けたものだと思う。花組でカーリーヘアと言えば、旗揚げの「ザ・隅田川」で岩藤役の僕が使って以来、あまり他では例が少ない。今回水下は都合により出演しないから、果たして、強烈な個性を持ったこの役は誰の手に!?



(左より)狸大臣(植本潤)・小姓野猫(のねこ)丸
若殿ポントコナ七世(嶋倉雷象)

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植本がまだ女形に定着する前だったな。彼の中にちょっと迷いがあった時期でね。狸大臣役の膨らまし方に苦労した。でも、この時の芝居が後々、植本潤という俳優をイメージ付ける雛形になったと思う。野猫丸を演じた堤広志君は、この時だけの出演でした。嶋倉雷象が頭に乗せている金冠(きんかん)は、歌舞伎で使われる物を模しています。天蓋(てんがい)から瓔珞(ようらく)を垂らし、本来「日月」の飾りがある天辺に、狸の顔が付いてます。雷象と堤君は、他の場面で赤フンを祭り締めにして踊ってました。今考えると、なんであんな格好させたんだろう?ま、花組の舞台で褌姿は、通過儀礼でもあるしな…。植本と堤君が居ない今回、このトリオがどんな顔触れになり、初演といろいろ設定が違うんで、どう活躍致しますやら。

(次回につづく)

撮影/宮内勝

チケット一般発売開始! 

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『聖ひばり御殿』のチケット一般発売を開始いたしました。
16年ぶりに蘇る、救国の乙女の壮大な物語!

郵便振替にてご購入のお客様には、送料(300円)無料キャンペーンも実施中!!
ぜひ劇団にてご予約下さい。

お申込は「券」ページから。
お電話でも承ります。
花組芝居:03-3709-9430

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公演情報掲載 

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「聖ひばり御殿」公演情報を掲載いたしました。

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