義経千本桜─渡海屋・大物浦─/木ノ下歌舞伎

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死者が現世に現れ、自らの死を再現する。夢幻能の趣向を、見事に義太夫化(=庶民化)した二段目の山場!これを、原典の平家物語へ遡り、ミニチュアな感覚の前説をタップリ見せ、結局、知盛に二度も入水させる!(佐藤誠君の落ち込みが、ちゃんと足裏を見せて見事)という構造。

堀川御所と伏見稲荷を、それなりのボリュームで辿って、渡海屋のセットを儀式のように飾り、いよいよ本題、という段取りもニクい。

過去の出来事を第三者に伝える「語り」の仕組みを、実にダイレクトに表現していて秀逸!壇ノ浦に入水した、平家の人々の赤系の古着が、ゴミとなった赤旗の無惨さであり、それを御装束として幾重にもまとう安徳帝が、そのボロ赤旗を脱がされ、真っ白なワンピース姿の女の子に戻る(姫宮!)。そして、薙刀にその執念の赤旗を数多巻き付け、碇に見立てて入水する知盛、というバトンタッチも見事!(演出=多田淳之介君)

魚尽くしもご注進も、判り易い上にちゃんと歌舞伎になっててグッド(夏目慎也君&武谷公雄君)。三悪道の件を、平家の死者達に語らせ、歌舞伎通りの動きで知盛が熱演する、そのバツクにあの戦メリのテーマ曲!客席がすすり泣く効果はあるけれど、この曲がお気に入りらしく随所に使われているが、あの映画と同時代に育った自分には、ちと閉口。クライマックスに使う舞台を余りにも見過ぎたせいかな?

清志郎の歌も、歌詞がテーマにベタ過ぎな印象で、なくもがな…。エピローグ、爆撃音の中で義経を取り巻き、滅びし魂が盆踊りを繰り広げるのも、視点は面白いが、曲一杯続けるのは如何にも長く、その他、後半は音楽に頼り過ぎているかも…。

それはそれとして、いや~面白かった~!木ノ下君、10周年おめでとうございます!!


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