2010年6月アーカイブ

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千穐楽!いろいろあってプロローグをカットする事になりました。マチネに、ぜひ見たかったと言って、ヨーロッパで仕事中の宮本亜門氏がいらっしゃいました。ここ数日天候が悪く、夜は随分冷えるスポレートで、刺激的な出来事でした。DVC00081.jpgその後ソワレ直前に出た虹です。翌日、同じホテルに宿泊という事で、チェックアウトの際お会い出来、舞台の感想や昨今の演劇事情など、短いながら濃いお話をさせて貰いました。ブレイクなさる前に新橋でお会いして以来で、お互いの越し方を思うと感慨深い。午後九時過ぎに開いた大楽が一番客席も集中して、舞台と共に澄んだ時間だったように思います。昨年12月のプレ稽古から実に七ヶ月。様々な事があった分、濃厚で正直長い道のりでした。賛否両論があろうが、これまでにない何かを生み出そうとする高度な現場を経験出来て良かったです。DVC00089.jpgミラノ経由の帰国。乗り換えの合間に空港でビール!帰りのフライトでも映画見ました。「バレンタインズデイ」初めのタイトルバックにシャーリー・マクレーンの名があったのでチョイスしました。何で恋愛事に虚勢を張るんでしょう?もう一つは911絡みの「Dear John」。国民として国の為に決断する事と、一人の男として生涯を誓った女の為にすべき事の狭間で苦悩する主人公。今の日本じゃ説得力のないドラマだろうな、と思いながらも登場する人物の魅力に助けられて、最後まで見られた。DVC00088.jpgやっといつもの蕎麦朝食に戻れました。帰国してここ数日会う人毎に「痩せた?」確かに食生活は変わったが、体力的にしんどい事は皆無だった。ま、色々気ィ使ってたんでしょうね。まだまだ生々しくて「思い出」という範疇には納まらない感じです。だって僕、クロアチアとイタリアで主役張ってたんだよ~ッ!帰って早々一気に更新した旅行記、これにて!

初日!スポレートでも大きな花束を頂戴しました。深夜酔って返ったホテル、翌日清掃の方がピッタリの花瓶に水を張って生けてくれてました。DVC00087.jpgさてその初日の一部始終いろいろな事がありました。古い建物は取り壊していけないらしく、手直し手直ししながら活用するのが法らしく、狭い町に工事中区域の多い事。その無粋な工事の壁全てにあっという間に、フェスティバルの巨大ポスターが貼られる。DVC00065.jpg西欧では人形劇=子供の為、というイメージが強く、去勢した「宦官」を描いた芝居に子連れが?!案の定、途中退席のお客が続出!だっておチンチンどうやって切った?って話だもんね。しかし最後まで見切ったご見物のスダンディング率は高い。生憎夕刻の雷雨のせいか、開演通り来た客は半分も居ない。いつ開演したものか?と劇場スタッフも舞台スタッフもあたふた。連携が上手く行かず、随分客席が揃った所でプロローグが始まってしまったので、「開演前」の学習という演劇的効果は消滅…。そんなこんなで、本番中、頭を抱えてしまったという演出家。DVC00062.jpg終演後、1日早くツアー打上げの我々とは別に、開催関係者と抗議の話し合いやら何かをしたらしい演出家。二時間後に合流した時も、もう愚痴愚痴愚痴…。写真は、そのムードを変える、町の高台から臨む谷の景色です。イタリア国内でも観光地という位置付けなんでしょうね。スポレート入りした当初からイタリア語を話す家族連れらしいグループが、僕たちに渡された地図と同じ物を手に散策する様子が多数見受けられました。フェスティバル初日とあって急に人が増えました。今年のポスターに「53」とありましたから、その回数が年数なのでしょう。

午後三時から通し稽古。家族接待の演出家から解き放たれて(苦笑)、少し町外れのレストランへ。DVC00069.jpg家族経営なのか?テラスの席から厨房が良く見える、開放的な店。地元の連中に評判らしく庶民的で嬉しい。初老のおじさんが一人で肉をカッ食らってる。後ろの席では若者達が日本の居酒屋とおんなじにヘラヘラ飲んでる。DVC00070.jpgスポレートフェスティバル参加作品「午後の曳航(オペラ)」のミュージシャンと思しき団体が入って来てワイワイ。急に客が増えたからか、奥からおじいちゃんがやれやれという風にお手伝いに出て来た。中高生らしい兄ちゃんがきびきびとテーブルを回り出す。やっぱり家族経営だよね。そうだと思って眺めてる方が楽しいんで、そうだ!と断定しておこう。写真は生ハム三昧。種類が違う。奥のパンの上の赤はトマトです。素朴な味で美味でした。

午後二時半から午後11時まで強行軍な稽古。これには理由がありました。演出家はパリから家族を呼んでいて、明晩はオペラ鑑賞をする予定なのです。まあ!とは思うが、こちらのスタッフにしても、今日中に問題点を見つけていた方が、初日までの修正には好都合。ともかく皆頑張って、無事終幕まで確認終了!深夜に訪れたレストランが変わっていて、店内はピノキオだらけ、妙ちきりんな日本語を喋るマスターが、オーダーも聞かずに次々とつまみ風な惣菜を数皿。「ワインは?」「赤」銘柄もくそもなく一本!イタリア名物「麦のサラダ」が嬉しかった。DVC00064.jpg写真はホテル正面。左から右へ向って下り坂の道沿いに建っているので、正面入り口から右手への部屋へは、階段を下って行きます。その上、建物の後ろ側は更に下ってますから、真後ろからホテルを見ると、フロント階が3階辺りになるんです。こじんまりした正面の後ろには下へ右へと建物が膨れている格好です。ともかく町は丘の中腹にあるから坂だらけです。DVC00073.jpg2枚目は朝食バイキングの部屋!このツートーンを見よ!鮮やかな原色の隣に真っ白を配するという趣味は、町のあちこちに見られ、だからこそその原色がより鮮やかに見えるのね。この部屋もフロント階から2階分下がった所にあります。メニューがこれ又質素!質素!果物のジュース、コーヒー、紅茶、パン、サラミ、チーズ、バター、ジャム、牛乳とシリアル食品、そしてフルーツが切りもしないでゴロゴロ。やはり野菜がない…。

昨日様子ではどうなる事か?と思った仕込みも、日本人&現地スタッフの努力もあり、どうにか形になって来た。夕刻に仕込みを中断して2時間弱、段取り変えの確認稽古。東京、ザグレブと身体に既に染み付いた段取りが変わるのがちと不安ではある。DVC00082.jpg一、二、三階席、そして映画「天井桟敷の人々」で見た通りの天井桟敷まで、綺麗に囲んだ馬蹄型。写真で騙されたが、客席の装飾は殆ど書割でした(苦笑)。この馬蹄型は正に桟敷付きの芝居小屋と同じ音響効果で、声の響きや返しが素晴らしく、無理なく発声が出来る。DVC00077.jpg夜はスポレート初日、偶然立ち寄った「Ristorante Apollinare」に再び。ワインも白と赤、しっかり飲んでがっつり食べたんで、一人5,000円を超えた。でも、絵に描いたような、品のいい初老イタリア紳士のウエイター氏。喋り方に滑らかな色気があって見惚れてしまう。写真は、スクランブルエッグにスポレート名物「黒トリュフ」を、目の前でガシガシ削った逸品。ウエイター氏「私が取って来ました。私の犬ですが…」


仕込み。舞台のバトンがロープで吊ってある!?DVC00058.jpg天井の簀子は全て木製。楽屋口が大聖堂の広場に面し、開放的過ぎで実は無用心という事で、全ての楽屋は無人にする時は常に施錠しなければならない。しかもこの「鍵」というのが極めて旧式なもの(ホテルの一部の部屋も同様)で、突っ込んでから何処に引っ掛けて回すのか、手探りするのが至極厄介。手応えがあったとしても、ご機嫌が悪いと開かない!DVC00059.jpg街角で見掛けた十二代目、絵になりますね。僕と鷹さん二人部屋は何故か女性でないと開かない。僕が大概ガチャガチャやってると「加納さん、開けましょうか?」と結城座女性座員の面々が次々声を掛けてくれる(隣が女性楽屋)。で、悔しい程女性なら誰でも開く!?チキショウ!スポレートを散策する十二代目孫三郎、いや~絵になります。午後七時頃からホテルのレストランで、孫三郎氏以下結城座幹部連と会食。しか~し、曇り気味だが日はまだ高い。他の客なんぞおらん。聞けば、習慣として夕食は早くて八時開始。その為、子供達はパンやミルクをあてがわれ、先に寝かされるのだそうだ。一人一品にプラス二皿を注文したが、顔触れがご年配で、酒を召し上がらない方が多かったせいか、余る!余る!やっぱり欧米人は大食漢なんだね。DVC00060.jpg最後のエスプレッソを頂いているとにわか雨!実は外の大傘の下の席だったので大騒ぎ!僕達はそろそろ終了だったから良かったものの、大抵のお客は真っ盛りな頃で、ワイングラス片手にホテル内にあたふた走り込んだり、ホテルの入り口周辺は上を下へ~!

スポレートへ移動!「イタリア時間」というのがあるそうです。ともかく何もかも時間が掛かる。案の定、ローマ空港で預けた荷物が出て来ない、出て来ない…。一通り出て来るまで30分以上かな?ローマ空港ののんびり具合は有名らしく、同じイタリアならミラノ空港を利用する知恵者もいるとか(こちらは比較的通常時間だそうだ)。挙句にやってくれましたクロアチア・エアライン!「宦官~」チームお荷物一つ積み残し!僕のでは無かったのですが…。明日スポレートのホテルに届くそうです。飛行機はこれが怖い。とんでもない便に乗せられて、とんでもない国へ運ばれちゃう事もあるのだそうで…。それらの処理の為、フランクフルト同様、1時間以上空港から出られずにおりました。DVC00048.jpgさ、チャーターした観光バスに乗り、陸路二時間を掛けスポレートへ!高速道路で山の中、午後8時半過ぎの日没を眺めながら、とっぷり暮れたその1時間後。着きましたスポレート。町中が、ナトリウム街頭の黄色に浮かび上がる中世の建築物。ちょっと路地に入ると車が進入出来ない石畳。FIFAのイタリア戦を観戦する人々が路地の野外レストランで歓声を上げている。別世界だ。DVC00052.jpgホテルがまた凄い!古い教会の建物を改造したらしく。内部は全く迷路。一階も二階もない、人によって、階段を降りてクネクネと廊下を行き、再び階段を上って辿り着く部屋。気をつけないと迷子になりそうとの事。僕の部屋も、フロント階から細い階段を二階分下りたのに、よろい戸のついたアーチ型の木枠の窓がある。一体この建物はどうなっているのか!?DVC00054.jpg建物内のありとあらゆる空間を客室に作り変えたのか、大小様々な広さで室内家具は全てアンティーク!勿論、入り口フロントもアンティークで飾り立てまくる。珍道中の大移動で皆殆ど食事をしていない。サッカーが終って少し静かになった路地へ繰り出し、直ぐ近くのレストランへ。DVC00056.jpg店の隣に仮設?された木枠でしっかり設えたテントで乾杯!皆一様に「やっと食事らしいものに有り付けたね」これはお国柄だろうが、クロアチアの味付けが塩パッパッの大雑把なもので、やはりイタリア料理は美味しい。それぞれの好みの一品に、一部はパスタを少しシェア。ビールの人、ワインの人(勿論、僕!)。がっつり食った訳ではないが、一通りの量を飲んで食って一人3,000円くらいかな。

千穐楽の本番前に、間口サイズの狭いスポレート用の段取り確認。装置はそのまま飾るが、随分見切れる箇所があり、位置を変更。そしてほんのちょっとだがエプロンステージがあり、イタリアの伝統では、見せたい重要な件はその部分へ出て来て見せるものだそうで、いわゆる額縁の柱のある所で、演劇的な意味では演技エリアから外れるが、敢えてここを使う演出を加味。古い馬蹄型の劇場なんで、劇中蛍光灯で照らし出される、客席の真紅のカーテンと金満の装飾に圧倒される事間違いなし。DVC00044.jpg初日、二日目に比べると、より集中し寛いだご見物でした。何回カーテンコールしたかな?環境が異なる日々だったので、矢張り疲れてる…。写真は只今日本語猛稽古中の学生くん達です。試験の合間を縫って連日劇場へ足を運んでくれて、とてもお世話になりました。有難う!

午後6時集合って、困るんだよね。ずっと部屋で寝てたいけど、お掃除もして貰いたいし。エエイ!と出掛ける。昼過ぎにドアを開けると待ってましたとばかりに係のお姉さん。「house keepig?」「イエ~ス!」こりゃ直ぐ終るな、と判断して、ともかく遠出せずに近くをブラブラ。1日目に案内して貰った場所が近所なのでそこらを。DVC00037.jpg週末だからか広場では、民族音楽の演奏会。ここクロアチアの曲なのか、集まった人々の中には曲に合わせて踊っているご年配アベックもおりました。民族衣装が可愛い。DVC00039.jpg路地の向こうから物々しいパトカーが二台。何事かと思ったら、クラシックカーのショーがあるらしく、古今東西の古き自動車の行列が延々と。車輪剥き出しの所謂クラシツクかーや、懐かしいサイドカー付きのオートバイ、伊予屋ご自慢の中古車と良く似たものも。すごく古いもの、ちょっとだけ古いもの、曖昧な基準だからこそ実にバラエティ。ボケ―ッと眺めていたら、「加納さん」大使公邸で接待をしてくれた女性(ご氏名を失念)が自転車から声を。昨夜の初日をご見物にいらしていました。「昨日はお疲れ様でした。今夜は大使がお世話になります」大使ご臨席の二日目らしい。意外に楽しいんで、今暫く散策しようとも思ったが、何せ日差しが強い。帽子は嫌いなので持参しなかったし、うっかり日焼け止めを持って来なかったので、頃合を見計らいスーパーで水とジュースを購入して部屋へ戻る。DVC00040.jpg小1時間寝て本番2日目。駄目出し「昨日はフワフワしてた」確かに。実は周辺で嫌な風邪が流行っていて、咽喉をやられるタイプらしく、自分も少しいがらっぽいので、すごく慎重に声を出していた。で、今夜は思いっ切りなテンションで臨んでみる。案の定、カーテンコールでフレデリックと目が合ったらウインクで返して来た。ちょっとしたコンディションで芝居が変わっちまう一例。

ホテルは幾ら高級になっても、朝食バイキングに並ぶ食事の種類は変わらないのね~。そりゃパンや肉類の種類は格段に多いですよ。でも野菜が前のホテルと殆ど同じ(パサパサな人参の微塵切りがプラスかな?)。唯一、一口大に切られたフルーツが高級感を作っていましょうか。冷房がないので開け放した窓からハエが数多飛び込んで来る事もなく、ノックもせず掃除のおばさんが侵入して来る事もなく、ゆったりした部屋で、初日の為に台詞を繰る。午後2時から舞台で手直し。特にプロローグを重点的に。実はクロアチア用に、フレデリック達がフランス語でなく、全てクロアチア語で作品の構造を説明する演出に変更したので、通訳の石川さんも含め、お3人初体験なクロアチア語に四苦八苦。挙句に仏人2人自分の不出来に吹き出す始末、やれやれ。どうにか終わってさて準備。ねえねえ、本番まで3時間以上あるよ…。クロアチアでは演劇の開幕が15分押すのは当り前だそうです。つまり時間通りにお客が集まらない。でも、開幕時刻の決定は舞台チーム側にあるのだそうだけど、だからと言って、まばらな客席のまま明ける訳にも行かず、間を取って午後8時10分開演となりました。DVC00033.jpg日本からお花を頂きました!自由席なのかしら。虫食いの客席なのに、客席後ろの通路や両サイドの階段に、立ち見やら坐り見やらのご見物が数多。誘導係という考え方がないらしい。順調に進んだ舞台だったが、ラスト間近でアクシデント!突然照明が落ちる。語り最中であった大久保氏が、台本が見えず完全にストップ。その中、フレデリックが「ストップ!ライトにアクシデントがありました。少しお待ち下さい!」。間も無く復帰して何事もなく閉幕したが、客席の中には、これも演出と思った人も居ただろうな。何せプロローグから、演劇的な約束事をことごとく壊しまくる舞台だから、お芝居としてどんな意外な事が起っても、舞台も客席もへっちやら状態だしね。終演後、ロビーで簡単なレセプション。特に誰それの挨拶がある形でもなく、ともかくお客さんや関係者が勝手に軽食をつまみ、酒を飲むだけ。程なくすると野外のテラスで二次会?仮設の舞台では、クラブのDJらしき男性が二台のアナログレコードを大音響でキュッキュッ!でもね、劇場にいらした皆様シャイなのか、誰も踊っとらん。DVC00041.jpgビゴル君が「お幾つですか?(英語)」と聞いて来た。どうしようかな?と思ったが、正直「フィフティ」と答えたら、「ほんと?33ぐらいかと思った(英語)」欧米人から見れば、東洋人てひどく若く見える現実を差し引いても、俳優としては嬉しいけど、演出家とか劇作家としてはね。僕、だから何処かで軽く見られちゃうんだろうね。態度もへらへらしてるし。同世代の演出家って随分老けたイメージだもんね。写真はホテルの一人飲みメニュー。スーパーの惣菜とワインだけど、気持ちは豊かっす。

100624_211829.jpgまだ新宿三丁目にあったタイニィアリスの初演が懐かしいね。あの時は善人会議だった扉座。是屋さんの1日早い誕生日(明日は稽古休みらしい)を祝うプチ飲み会を覗く。既にいいコミュニケーションを掴んでいる皆様、ザックバランなムードが上手く舞台に反映する事を期待する。でも、可児市に缶詰な俺、見れるのか!?

ザグレブとスポレート/番外

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イタリアはスポレートで、現場の通訳(日本語→イタリア語)を担当なさった粉川妙(こがわたえ)さんのブログhttp://butako170.exblog.jp/11382439を見つけました。日本で「スロー風土の食卓から」という本を出版なさっているフードプロデューサーです。お世話になりました。

DVC00035.jpg実は宿泊中のホテルが旧社会主義時代な環境で、つまり随分不便なので、演出のフレデリック氏、美術のローラン氏、孫三郎氏、千恵氏、大久保氏、僕、の6人は旧市街地にあるホテルへ引っ越す事になりました(写真はホテル近くの街路樹)。ザグレブには中級がないらしく、いきなりな高級ホテルで面食らう…。エレベーターはルームカードを差し込まないと希望の階に行けない。つまり宿泊者以外は客室階へ潜入不可能。国内でも仕事で地方へチョクチョク行くが、そんな高級なシステムをついぞ知らず、フロントへ駆け込んで「シックス・フロア、アイ・キャント、アップ」正直こんな英語力です。フロント係のお姉さん明らかに「まあ、呆れた。こんな事も知らないの?」な顔。だって、知らなかったんだもん。セミダブルの真新しい部屋は超モダン。
DVC00034.jpg「HAVE A NICE ST(D)AY」(STとDが二列になってる)と書かれた壁の金属製オブジェには、本物のリンゴが乗っかってします。その作品に僕は事もあろうに洗濯物を吊るしています、失礼。午後2時から昨日の問題点をチェックしつつ抜き稽古。午後8時から本番通りの舞台稽古。「頬が涙を伝って流れていて」とか「乾いたコミでくるんであった」とか、終了後、翻訳の松井氏から指摘されるまで気付かない程、妙なテンションで勤めていたようでした。

DVC00006.jpgいよいよ午後2時から稽古。装置照明は東京通りだが、新しい場所で果たして…。先ずはザッと通そうという事になりましたが、様々なキッカケがギクシャクする。ま、条件違うから仕方ないか…。見ていた翻訳の松井氏に伺うと、原作者が言葉に込めた様々が、演出と演技がテンションを上手く共用出来ると東京の時のような掛け算の成果が生れるが、そこがまだガタガタしている、との事。随分声を吸ってしまう空間のようで、怒鳴らず響かせる出し方をせねばならんらしい。ロビーや裏の駐車場との扉が一枚のみなので、外の雑音が聞える!聞える!最新鋭の設備を備えているようで、あちこちが大雑把な印象。通し終了後、技術的な確認の為、食事休憩を兼ねたお休みと皆三々五々散らばったが、結局、スタッフの手直しが夜まで掛かりそうなので、今日のお稽古はお開き。またまたカンカン照りの飲食となりにけり。海を渡ってから、一食の量が少なく、体力が落ちそうなので、今晩は少し多めにしてみた。でも日本で飲む時よりは少ない。逆に日本で飲む時に、僕食い過ぎかも知れません。帰国するまでに胃を小さくしよう。写真はほんと質素な質素な「ホテル・ザグレブ」。

早朝の様々な囀り(烏が混じっているのが少々興ざめ。この烏のファッションがね、黒と灰色のツートーンなのよ!)と、日中の暑苦しさとは打って変わった涼しさで、早々起床の2日目。まだ数人しか利用していない朝食コーナーへ向うと、昨日と同じフロントの女性から「良く寝られた?(英語だったが、これくらいは判る)」とお声掛けを頂戴。満面の笑みで「イエ~ス」。僕幾つに見られてるかな?実年齢言ったら驚くだろうな。全くアホな事を考えながら、吃驚する程シンプルなバイキング(パン数種、チーズ数種、ハム数種、トマト、レタス、スクランブルエッグ、オレンジジュース、インスタントコーヒー、ティーバック、ミルク)なのに、妙に美味い朝餉を心豊かに食す(笑)。DVC00005.jpg昼は駐クロアチア日本大使公邸に皆でお呼ばれ。雄大な旧市街地とは違う、日本そっくりゴチャゴチャした町並み(洗濯物が外のベランダに干されてた!)を抜け、高台の明らかな高級住宅街におわします菊花のご紋章輝く、こじんまりながらなかなか結構な邸宅。何と!大使夫人が僕の名をご存知らしく、「グローブ座」に出ていた頃(20年前)を知っているとの事。更に斉藤憐氏の下で女優をしてらしたと伺い、孫三郎氏千恵氏共々、こういう場ではなかなか出ないらしい演劇話に花が咲いた。「旧ユーゴスラビアから、日本では平成になった頃の戦争を経て、ようやくの独立から今だ15年。新しい国作りで活気のあるクロアチアを存分味わって下さい」大使のお言葉がとても実感出来るここ数日を振返り、とても高揚する。その後、劇場に戻り、仕込み真っ最中の舞台でなく、建物内の会議室らしき所で、字幕との合わせを確認しつつの読み合わせ。随分フレデリックがお疲れの様子だが、この仔細は後に知れる。二人だけだが役者連は解放され、僕は近くのスーパー「KONZUN」で買出し。測り売りの惣菜と赤ワインを手に、午後6時だと言うのにカンカン照りな道をテクテク。日没が午後9時過ぎなので、夕刻開放されてホテルの部屋で飲み始めると、殆ど昼間から酒をあおっている、心地良い罪悪感。ああ、ストレス解消!

劇団鹿殺し「電車は血で走る」

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同じ10年でも、僕ら以上に綱渡りだったそうな。志向もタッチも違う皆さんとのお付き合いも、元はともかく田仁屋さんがオーディションを受かったからです。座員で有りながら、他劇団の門を叩くなんて23年前には許されない行為でしたが、最近はお陰様で余裕のよっちゃん(死語ですね)。今や、田仁屋の純真さと可能性を東京で初めて見出したのは「花組芝居」です!と声高に言わないとならんぐらい、彼の魅力が浸透しつつあります。逆にイメージの手の内に終らぬように、花組の現場で新しい可能性を見出す必要を感じました。円形の初演より実に判り易くなった舞台。その点でとっても今「旬」だよ。メジャー路線まっしぐらな鹿殺し。丸尾(苗字=丸尾丸から改名)君には、やりたい事を見失わないようにね、と助言。中心になっている人間が負担に思った時、その団体は行き先を見失います。

DVC00032.jpg劇場仕込み。十数人のヤングマン・バイト君達が良く働く。役者(大久保氏と僕)はOFF日。キャラバンを放浪した経験の持ち主、鷹さんは「ブラブラします」とお出掛け。こちらは海外へ持ち込んだ仕事があるんで、楽屋で持参した書類と睨めっこ。その後ろをヤングマン達がトイレ拝借と出入りする。大概の奴が僕に気を使ってソロソロと行き来する。バスに乗っても思ったのだが、社会主義だったせいなのか、全体に物静かな民族気質と見た。関係ないけど、劇場内が冷房効き過ぎ!でも彼らはTシャツに七分パンツ。中には上半身裸で照明作業している者も居る。DVC00025.jpg英語がOKと聞いていたが、劇場近くのスーパーでは通じない店員もチラホラ。商社出身で海外経験の長い押田氏が「だからスーパーの定員なんですよ(そんな職業にしかつけないという事…)」。大学も含めると10年近く学んだ「英語」。でも喋れるようになるには、別の訓練(英会話スクールやら留学やら)を要する日本の英語教育を呪う。僕なんか、宿題や試験責めのやり口にウンザリで、すっかり「英語」そのものが嫌いになってしまいました。こんな自分がスーパーのバイト人生にならず、劇団含めて、二回も海外公演を経験するとは、演劇の神様に改めて感謝する次第です。

DVC00022.jpg朝も早からクロアチア・エアライン。1時間のフライトが昨日の今日なんでアッちゅう間。移動と劇場下見のみなので、公演をお手伝いしてくれる現地大学生達が、旧市街を案内してくれる。DVC00029.jpg結城座さんは20年近く前(つまりユーゴスラビア時代)に、一度訪れたらしく、千恵氏や孫三郎氏が「ここ!ここ!」と懐かしげ。石造りの壮麗な建物をそのまま(壊しちゃいけないらしい)に、飲食店や事務所やら様々が入居。パステルカラーの、ピンク、イエロー、ブルー、グリーン…。街全体を一人のデザイナーが監修したかのような統一感一杯の壁の配色。inline;">DVC00026.jpg樹齢何年?の巨木の街路樹。パブと大使館が、同じ様式の洋館に入ってるんですよ、信じられる?公園の隅に設置された、古めかしい、あれは百葉箱だろうか?DVC00038.jpg時計と温度計と湿度計を備えた高さ2メートル程の屋根付きオブジェ。気温は30度を指していてジリジリした日照りなのだが、サラッと爽やか。ええ、湿度が低いのですよ。傘を立てた、欧米で良く見る道端席で一休みドリンク。大学二年のビゴル君、只今日本語と韓国語を勉強中。名前を漢字で書いてくれと催促。その一つ一つにどんな意味があるかを聞かれる。少し困っていると、平井君がフォロー。彼はイギリス留学の経験あり。自分のファーストネーム「航(こう)」を「ship」と説明していた。いつも少女のようだな、と思っていた矢田ちゃん(結城座、芝居冒頭、僕にコピーを届けてくれる女子社員を演じている)も、随分現地女子学生と英語でコミュニケートしている。「クロアチアの名物料理は?」「(ちょっと考えて)Nothing!」つまり周辺諸国の料理がごちゃごちゃ入り込んでいて、クロアチア特有の物はないそうだ。確かに、その後、皆で押し掛けた、石畳の坂道にあるレストランの料理はイタリアンだった。

DVC00001.jpgDVC00002.jpgDVC00023.jpgDVC00021.jpgDVC00024.jpgこういう時の常で随分早起きし(嫌でもしちゃう)、最後の朝食を食す。ここ数年朝食は決まったものしか食べていない。半人前未満の十割そば(そばはカロリーが意外に高い!)を蕎麦湯ごと。そこへ納豆、刻みネギ、大根下ろし、すり胡麻(黒)、梅干(減塩)、ワカメ。味付けは小さじ一杯のそばつゆ。これをこれから二週間以上食べないで、自分の体調が果てしてどうなるのか?一応、乾燥ワカメは尿酸値対策なので旅行鞄には入れた。怖がりなので予定より早く出発するも、東京駅からのJR成田エクスプレスが30分(以上)おきなので、結局努力空しく予定通りの到着。気のせいか、初めて成田空港へ訪れた時より場内が明るく感じる。以前は広いだけで薄暗い印象があったが…。12:15離陸。昨今取り沙汰のJAL、何故か人気らしく、パリかイギリス乗換えでクロアチア入りを計画したらしいのだが、ことごとく満席で、ようやく取れたのがフランクフルト行き。17:20フランクフルト着予定だが、勿論これは現地時間。日本時間が7時間早いからトータル12時間以上のフライト。時差ボケに備えて機内では寝ないようにしようと決心(うとうとはしたけど)。国内便の備付けテレビは機械の都合で勝手に番組が始まってしまうが、好きな時に好きな所から見られるんですね(え?これも世間知らず?)。「アリス・イン・ワンダーランド」「歴史ヒストリア/狩野永徳VS長谷川等伯」「世界不思議発見/インドネシア」「シャッター・アイランド」見過ぎて頭痛がする…。「アリス~」3Dなしの小さな画面で見るせいか、蜂屋が言っていた通り、後日談のパロディとしては捻りが足りない。「歴史~」今に残る等伯の国宝2枚(楓図と松林図)の謎に迫るドキュメンタリー。当時の絵師達は買い手のお望みのままに絵を描くのがその本来だったが、「松林(しょうりん)図」は、実力ともに期待されていた息子を失い(病死)、自分の胸中の赴くまま、故郷の風景を描いた水墨画の傑作。四百年絶大な勢力を誇った狩野派一族は、維新と共に消滅したが、等伯の子孫は今も仏教絵師として、等伯から数えて十七代目が存命。世の中判らんね…。「シャッター・アイランド」結末を言えば有り勝ちなのだが、ディテールは充分楽しめた。同じ療養所なのに、主人公の幻想ではひどく荒涼としているが、ラストシーンの現実では、綺麗に整備された芝生の緑が鮮やかな庭園になっている。所長のキャラクターも、ドラマの裏と表の微妙な所を行き来出来るものになっているし、様々な演出が巧妙。乗換えの為、今宵はフランクフルトで一泊。総勢二十名近いメンバー用に手配した筈の送迎車(8人乗りバン)3台が、居ない居ない来ない来ない…。結城座制作押田氏が正に東奔西走すれど、1時間以上空港前で大荷物と共に待機…。いや~大陸は大雑把だね。この「手配済みなのに~」事件は明日のクロアチアでも体験する事となる。宿泊先「Holiday Inn」は空港近くの林の中にあるせいか、小奇麗なのに蝿が多い。一階の落ち着いたBARで、押田氏、結城座の頼れる男=平井君、愛すべき大久保鷹氏と、各国グルメ談義の最中もブンブンブン!ドイツの焼酎というのを頂きました。

先月31日まで花組ヌーベル『ハイ・ライフ』の公演や片付けに追われ、直ぐ結城座にて思い出し稽古が3日間。連日比較的短時間の稽古スケジュールなので、その行き帰りに旅の買出し。海外渡航は花組の「天変斯止嵐后晴」米公演とBESETO演劇祭観劇で北京へ行ったきりなので、何が必要なのやら記憶にございませ~ん。幸い周辺に多少海外慣れしている座員が居たので、助言を貰う。中でも我らがオーニョは、急に頼まれた演出助手の仕事でパリへ飛ばされた経験の持ち主。あれこれ聞くが、実にギリギリな状態で、不安感を逆に煽られる。荷造りしつつ、あれも要る!これも要る!で日に二度買出しに出掛ける経験をする。僕ってやっぱり箱入り…。

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