和の初め、浅草がまだ帝都の娯楽の中心だった頃。
その裏通り、袋小路にある今にも倒れそうなおんぼろ小屋・青薔薇座では人はいいが金儲けに全く縁の無い館主の春山鉄之介(村田雄浩)が首をくくろうと小屋の梁に縄をかけていた。
抜ける天井、屋根裏から転がり出る大きな狐の像。かつて彼の先祖が祀っていたお稲荷らしい。
そこに鉄之介の父親の鉄太郎(加納幸和)がバックダンサー付きで派手に登場。
「このお狐様は、我が家の守り神だ。必ずいいことがあるから我慢して生きろ」
夢?幻?消えた鉄太郎の後にはギンコ(宮本信子)と名乗る一人の女が現れる。
そのまま、青薔薇座に住み着くギンコ。
どう云うわけか彼女が薦める脚本、芸人達を小屋に出すとこれが大当たり。浅草で劇場の背景描きをしていたレビュウ作家志望の杉谷誉(橋爪淳)、くすぶっていた役者カラチュウこと唐木田忠一(柳家花緑)達である。
実はギンコは青薔薇座に古くから住む九尾の妖怪狐だった。 青薔薇座の跡地を狙っている映画会社御子柴シネマのオーナー御子柴大蔵(中条きよし)たちから是が非でも青薔薇座を守りたいのである。
何とか再建なった青薔薇座に駒が足りないという事で、一行は上海に行くことにする。
アジア一のジャズの都、“魔都”上海では“楼蘭(大鳥れい)”と呼ばれる幻の歌姫が話題になっていた。
どこの劇場に現れるかわからない幻の歌姫。
ギンコ達はなんとか楼蘭を一座にと探し回り、やっと見つけたその歌は素晴らしいものだった。
が、ギンコ達の誘いに何の興味も示さない楼蘭。それどころか、同じく楼蘭を日本に連れ帰ろうとしている御子柴の登場にてんやわんやのギンコ一行。
何としても楼蘭を浅草に連れ帰りたい誉は一途の望みをかけ、港で彼女を待つ。が、帰国する船の前に現れた楼蘭のかたわらには御子柴が……。


意の中で帰国したギンコ一行。
御子柴の元にいる楼蘭の説得に向かうギンコには楼蘭がかたくなに心を閉ざす理由が分かっていた。
楼蘭もまた狐だったのだ。人間世界の中で正体を隠して生きているはぐれ狐。ギンコには最初に会ったときから彼女の正体がわかっていた。
「あたしは誰も信じない。狐だろうと人間だろうとね」誉を想いながらもあくまでかたくなな楼蘭。
そして又、同じく狐である御子柴の大きな存在がギンコ達にとっての壁となって立ちはだかる。
が、誉に惹かれる楼蘭はギンコ達の元に現れる。
一方、ギンコへの想いを素直に言えない鉄之介、なんだかんだのドタバタはしかし、楼蘭を加えたカラチュウ一座を、浅草を代表するバーレスク劇団と育てて行く。
しかし時代のうねりは、破局の芽となって、確実にギンコ達にも訪れていた。
そして狐としての力が弱まっていくことを感じ、自分達が消えて行く時代が来る事を予感するギンコ。
対照的にそんな時代を食って己の野望を果たそうとする御子柴。
そんなある日、誉の元に召集令状が届き、出兵して行く。
鉄之介にも召集礼状が……。一人青薔薇座に残るギンコ。
戦況は追い込まれ、東京にも空襲が始まる。浅草もそして青薔薇座も火の海に包まれる。
その中で、ギンコとギンコの窮地に駆けつけた楼蘭は戦場で誉が死にかけているのを直感する。
実は誉はギンコがかつて愛した人間との間に生まれた子であったのである。
吹雪の中国大陸で致命傷を受けた誉。そこにギンコと楼蘭そしてカラチュウ一座が現れる。
ギンコと楼蘭の妖力が起こした奇跡だった。
ギンコが母親であることを悟る誉。
誉が託した台本が幻想のレヴュウとなる。華やかなそして最後のレヴュウだ。

して終戦。
ギンコは……、鉄之助は……、御子柴は……。

 
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