□ もどる □
 

ハナオフ『相対的浮世絵』役者インタビュー:その五
伊予屋に聞く!
 記念すべきハナオフ第一弾『その鉄塔に男たちはいるという』に続いて、2回目の登場となる桂さん。
 稽古終了後の伊予屋を突撃してみました。





Q.今回の役柄について教えてください。

今回はですね、主人公の友人で高校生のときに火事で死んでしまったんだけど、
20年後に甦って友達に会いに来る役(=遠山大介)です。
俺、大体外部の公演のときは実年齢に近い役が多いけど、
花組ではあんまりそういう設定ないね。
同級生の役っていうのも、ナミギン(注:泪目銀座)のときにやったくらいかなぁ。
その時は同級生で高校生役やってた、俺。まだ20代だったけど。


Q.稽古場の雰囲気は?

ずっと(舞台に)出てるからなぁ。
で、出てないときも、
今まだ(稽古場の)外で台詞覚えたりしてる段階だから、ボーっとする時間がない。
共演者について?
えーっと、貴ちゃんは一緒にお芝居するのは初めてだけど、彼女の芝居は俺観てる。
まだ貴ちゃんがリリパ(注:笑殺軍団リリパット・アーミー)に居るときに東京で公演があって、
木原さん(注:木原実)がゲストで出てて、スズナリでやってたんだよ(『壺中天奇聞』)。
俺リリパ観るのも初めてで、たぶんその時中国の服かなんか着て出てたと思う。
啓ちゃんは『西鶴一代女』で共演してるし。
だから皆知らない仲ではないんだよ。
そういう意味ではギクシャクはしないね。ま、気楽な稽古場。


Q.現代語の台本はいかがですか?

鏡花とかとは対極だよね。
あれはもう、歌を歌っちゃうように流れる言葉の美しさを表現するわけじゃない。
でもこのスタイルもこれはこれで、頭を切り替えれば平気。
なんてこと無いわけじゃないんだけどね。
大体俺元から台詞覚えよくないし(笑)
本番中に違う事とか言っちゃうし。正確に台詞を言おうと思ってないから(笑)


Q.そういえば今日も違う台詞言ってましたね。

意味は大体あってるんだけど、言ってるよね〜(笑)
ただ、正確に言った方がいい台詞は気をつける。
「あ」とか「え」とか何気ない言葉でもちゃんと計算して書いてあるところもあるから、
それは、ちゃんと言う。
雰囲気で何とかなる台詞は“まぁ、いいか”って(笑)


Q.演出家に特に注意される事はありますか?

俺だからこそ言われるっていうのは、特にはないかなぁ。
普通に“あぁやって”“こうやって”とか
“ちょっと立ってやってみて”とか言われるくらい。


Q.演出したいと思ったことは?

あぁ、あるよ。今でも演出はしたいと思ってる。
でも水やんどころじゃなく経験もないしさ。
ハナオフでも見せられないよ。もう、練習試合程度(笑)?
勉強会みたいなのじゃないと怖いよね。演出家の目を持ってないからね、俺は。
それがどんな目かもわからないし、ノウハウもないし。
でもいつかは出来たらいいね。


Q.話は戻りますが、遠山役について。

外見は年をとってるけど、中身は高校生のままでやろうかなって思ってる。
高校生ってまだ世間知らずじゃない?
礼儀がないっていうか。まぁ、俺もそうだったんだけど。
人をぞんざいに扱ったりとか、自分の思い通りにならないとすぐいらいらしたり。
ただ(あの世でも)時間は20年過ぎてるんだよね。
でも生き残った2人の同級生みたいに
大学出て就職して、結婚とかっていう“社会経験”はないんだよ。
きっとあの世でふわふわ遊びながら過ごしてたんだよ、20年。
だからまぁ浦島太郎じゃないけど、ちょっと感覚はずれてるかもしれない。
年齢は37とか8だけれども、そこまで過ごした環境が違うからね、
どちらかというと高校生に近い感じかも。

例えばさ、人が扉を開けてくれたら「ありがとう」っていうじゃん、普通?
今日俺がたまたまコンビニで扉を開けたのね。
でも若い連中は皆知らん顔で入っていくの。「俺は自動ドアかよ」みたいな(笑)
そういう無礼さ?を出したい。
「こう言ったら人はどう思うだろう」っていうのを考えない感覚。
それをあざとくなく出していければな。


Q.遠山は何をしにこの世に出てきたと思いますか?

(友達2人に)会いたかったんだろうねぇ。
出てこられない時間が長かったから。
「怨んじゃだめだ」って必死に自分に言い聞かして。
ただ、(2人の)現状を救う為に出てきたわけではないんだよね、きっと。
本当に会いたくて来ただけ。
で、好かれる為に彼らを助けてる。
好感を持ってもらうために、色々やる。


Q.今回の見所は?

洋ちゃんと邦ちゃんとがこうやって芝居することはめったにないんだよ。
あ、これ皆が言うんだ(笑)?
ただこれがオリジナルな脚本とかだったら色々言えるけど、
割と有名な芝居で、最近上演した事のあるやつを借りてきてるわけじゃない?
自分達のものじゃない感覚はちょっとあるかな。
ただまぁ、まだ試行錯誤の段階だけど最終的には自分達の公演にしたいわけで…。
あ、見所? 俺の学生服姿(笑)


Q.自分の中の目標はありますか?

面白い芝居。
いや、目標っていうわけじゃないんだけど、
ふだん花組でやるときはわりと踊りあり、唄あり、衣裳ありじゃない。
華やかで笑いもあるし、泣きもあるし殺陣もあるし。
今回はそうじゃないんだけど、
例えば“静かな演劇”とかって呼ばれるものの真似はいやなのね。
そういうのをお手本にはしたくないなぁって。
実際(外部公演で)そういう芝居を経験してると、
稽古のときに変なテクニックを使ってしまうことがあって。
そういうのだけで作っちゃいたくない。
そっちの方が楽だし、ついつい流れていきそうなんだけど。
結果的に観に来たお客さんに「あぁ○○っぽいね」って事は言われたくない気がする。
洋ちゃんの声がでかいとか、俺冗談で「ウルサイ」とかって言うけど、
それもありなのかなって考える。
どっちかに寄るっていうのはなくていい。
ムリヤリこっちに引っ張り込むっていうか、花組っぽくする必要もないし。
俺達だからこそっていうのを作りたい。


Q.突然ですが、質問コーナーです。


by.井上
 外部出演の多い桂さんですが、役者として共演してみたい人は誰ですか?

何?そんなコーナーあるの(笑)?
いっぱいいるよね。
あ〜、でも「植本さん」の顔が浮かぶねぇ。


Q.???花組同期の植本潤さんですか??

あ、でも共演はしてるか。
ただ、ちゃんとからんだことはあんまりない気がする。
初演の『百鬼夜行抄』では母親と息子だったけど、そんなに言葉を交わす感じでもなかったから。
婦系図』では俺が魚屋で、潤が…お蔦さんだっけ?
他の同期の八代とかメグ(大井)とは外部でもがっつりからんだことあるからなぁ。


Q.では最後に一言。

大抵芝居を見終わった後って、きつねにつままれた感じになるじゃない?
夢を見終わったかんじ。
それがいい夢でも、悪い夢でも。
献血した後みたいにふっと体が軽くなる感じにしたい。
そんな芝居にしたいと思っていますので、ぜひぜひ観に来て下さい。



□ もどる □