座長が白状!初演版登場人物?エピソード! 其ノ弐 

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お待たせしました!
座長自らが語る、初演版登場人物紹介の第二弾をお届けします。
「懐かしい~!」というあなたも、
「初めて見る!」というあなたも、
これを読んで一層ご期待くださいね。


樹奇(じゅき)天帝 (大井靖彦)

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ジャンヌ・ダルクの生まれ故郷ドムレミイ村の教会の近くに、大きなブナの木があり、仙女(妖精)達が出没するというので「仙女の樹」と呼ばれていました。ジャンヌがお告げを聞いたのが、この辺りと伝えられています。お告げの主は、聖ミカエルと聖マルグリットだったそうですが、それらから発想して、姫狸を戦争へ駆り立てた神の名を「樹奇(じゅき)天帝」としました。実は、当時(2005年)地下鉄サリン事件が起こっていて、某教団に押し掛けるマスコミなどに、信者達がビデオカメラを向けていた様子をそのままに、ビデオカメラを回しながら登場させていたのですが、或る終演後、客席に、その教団の冊子が落ちていて幕内は大騒ぎ。たまたま近くの駅前で信者達が配っていた物と判明したのですが、気持ち悪いんで翌日からその演出は取り止めました。今思えば、物騒な頃でした。



お狸クインテット

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初演本第一稿ではカルテットでしたが、メンバーが増えたというのでクインテットにしました。座内バンドが出来ていたんで、是非とも利賀村初出演の趣向に、演劇の聖地で素人ライブをしちゃえ!という目論みでした。舞台稽古で大事件が起こったのですが、詳細は会員制の「花組通信」に掲載しています。是非、会員登録なさりご購読下さいませ(会員登録はこちら)。奥の植本潤がピアニカ、手前左の大井靖彦がベースギター、その右が、広田豹(1997年退座)のリードギター。他に八代がリードギター、ボーカルが桂憲一でした。今回は新しいメンバーで「お狸ブラザーズ(人数に変更があってもいいようにしました。また、モデルにしたバンドが○○ブラザーズだった事もあり…)」として登場します。バンド稽古はもう始っているようです。



尼狸穴壷尼(あなつぼに)(広田豹=1997年退座)

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広田豹(ひろたひょう)は、花組史上唯一の芸名です。最初は本名を名乗ってましたが、入座して三年目、「姓と名のイニシャルが同じ名前にしたい」という事で、劇団では初めての劇中口上という形で披露しました。昔のアングラ演劇の役者達は、良くシャレた芸名を名乗ってました。「唐十郎」氏の名は、同じ状況劇場にいらした「天竺五郎」氏とお対だったんです。曽我兄弟に三国を繋げている訳です。傑作だな。広田君は英語に堪能(一橋大学卒業)で、在座中は更にフランス語の勉強もしていました。退座後にロシア語もマスターしたらしいです。「穴壷尼(あなつぼに)」実は命名の由来をトンと忘れてしまいました。和尚吉三→坊主→マッサージ→穴(ツボ)だったかな…。



白面金毛九尾狐(はくめんきんもうきゅうびぎつね)
(三人遣い人形)

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狐軍の総大将なら、この怪物でしょう。インドや中国を舞台にした傾国の美女(実は化け物)伝説が、日本へ伝わり、日本でも美女に化した狐の物語が生まれ、それぞれが合体し、三つの国に跨って国を揺さ振る大悪事を働いた、九本の尾を持つ狐の大妖怪に膨らんで行ったのだそうです。能に「殺生石」という作品があります。玉藻前という美女に化け、鳥羽上皇を悩ませた九尾狐は殺されますが、その怨念が石となり、近寄る生き物を毒気で殺しています。通り掛かった玄翁(げんのう)という僧が祈り、パックリ割れて現れた野干(やかん)(狐に似て声は狼という悪獣、もしくは狐の別名)こそ九尾狐の執心で、「あなたの祈りのお陰で成仏出来る」と言って姿を消す。この後(のち)シテ(後半の主役)は通常、「野干」というおどろな面を掛け、装束も鬼同様なのですが、小書(こがき)(特殊演出)に、化けていた玉藻前のイメージから女姿で演じる事があります。それを参考にして緋袴に白い長絹を着てます。顔は「大飛出(おおとびで)」という、元来、菅原道真が雷神となった怒りを現した面を真似ました。あ、かなづちの「玄能(げんのう)」は、殺生石を祈り割った玄翁上人が語源です。


(次回へつづく!)

撮影=宮内勝