座長が白状!初演版登場人物?エピソード! 其ノ壱 

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めっきり涼しくなりました。残暑お見舞申し上げます。
『聖ひばり御殿』の稽古初日までもう間もなく!
16年前に初演されたこの作品、ご存知ないお客様も多いはず!?
というワケで、今回の先取り日誌は、豪華座長のコメント付初演登場人物のエピソードをご紹介いたします。


雲雀ケ丘(ひばりがおか)みすず(加納幸和)
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脚本上では存在しない役でした。鈴木忠志氏という演劇界の重鎮に、利賀村で作品を作れ!と言われ、張り切り過ぎちゃって、役者としての自分の出番を考えてなかった事に気付き、群読(複数で同じ台詞を言う。卒業式の呼び掛けみたいなもの?)の一部を横取りして喋りました。木下順二氏の「子午線(しごせん)の祀(まつ)り」の舞台で見た、山本安英(やすえ)丈のモノローグをパロデイにした役なんで、ほんとはね、裾引かなくていいんだけど、折角、能舞台を模した「新利賀山房」の、真新しいスベスベな床で芝居が出来るのだもの、大きな顔して引かせて貰いました。実は16年振りの再演に際し、思い切ってカットしました。じゃ僕はさて何をやるでしょう?



おきみ大明神(水下きよし)
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喪服に天使の輪と羽根を付けているのは死者だから。水下の女形は、他に「ザ・隅田川(旗揚げ)」奥女中、「奥女中たち」梅の方(再演ではお辰だが、簡略衣裳だった)、くらいかな?珍しい。ちゃんと黒無地帯をお太鼓に締めています。「一間(いっけん)男」水下サイズの女用喪服を、花組は所有しております(少し自慢)。ヘアの色が只の白でないのは、確か、この公演の3年前「薔薇西遊譚(つたえきくベルサイユのものがたり)」で、僕がマリーアントワネット役で掛けたものだと思う。花組でカーリーヘアと言えば、旗揚げの「ザ・隅田川」で岩藤役の僕が使って以来、あまり他では例が少ない。今回水下は都合により出演しないから、果たして、強烈な個性を持ったこの役は誰の手に!?



(左より)狸大臣(植本潤)・小姓野猫(のねこ)丸
若殿ポントコナ七世(嶋倉雷象)

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植本がまだ女形に定着する前だったな。彼の中にちょっと迷いがあった時期でね。狸大臣役の膨らまし方に苦労した。でも、この時の芝居が後々、植本潤という俳優をイメージ付ける雛形になったと思う。野猫丸を演じた堤広志君は、この時だけの出演でした。嶋倉雷象が頭に乗せている金冠(きんかん)は、歌舞伎で使われる物を模しています。天蓋(てんがい)から瓔珞(ようらく)を垂らし、本来「日月」の飾りがある天辺に、狸の顔が付いてます。雷象と堤君は、他の場面で赤フンを祭り締めにして踊ってました。今考えると、なんであんな格好させたんだろう?ま、花組の舞台で褌姿は、通過儀礼でもあるしな…。植本と堤君が居ない今回、このトリオがどんな顔触れになり、初演といろいろ設定が違うんで、どう活躍致しますやら。

(次回につづく)

撮影/宮内勝